社経研DP

2023.04.17

長期脱炭素電源オークションの制度設計と所期の目的達成を妨げるリスク

  • 電気事業制度
  • エネルギー政策

要約

 長期的な安定供給確保を前提に電源の脱炭素化を進めることを目的として、「長期脱炭素電源オークション(以下、本制度)」の検討が進められている。本制度には、投資の予見性を確保することで脱炭素電源への投資を促し、需要家に対して脱炭素電力の価値(脱炭素電源のkWh価値)を提供するとともに、中長期的な観点から安定供給上のリスクや電力市場価格の高騰リスクを抑制するという目的を達成することが期待されている。本稿では、目的達成のために重要な制度設計のポイントとして、本制度の対象となる電源の条件、電源の調達方式と募集量、入札価格に関する論点について説明するとともに、所期の目的達成を妨げる制度設計のリスクを以下のように指摘する。
 本制度の目的達成を妨げるリスクを、エネルギー政策の基本方針である安定供給・環境適合・経済効率性に係る内容に分類すると、安定供給確保のために欠かせない既設電源の維持や電源の多様化にもたらす影響として「既設電源の廃止加速リスク」・「電源構成の偏重リスク」、脱炭素電源からのkWh提供に関する「脱炭素電力の電力量確保リスク」、国民負担抑制の観点から「電力調達費用の上昇リスク」・「負担増加の非受容リスク」・「他市場収益の監視費用増大リスク」として整理できる。本制度に期待されている目的を達成するためには、これらのリスクに十分配慮した制度設計が欠かせない。
 2024年1月の初回オークションの開催に向けて、制度の詳細設計議論は大詰めを迎えており、今後は制度運用に向けた具体的な検討が進められていくと見られる。他方で、重要な論点が生じた場合には然るべき検討を行っていくともされていることから、政府審議会における議論の動向については引き続き注視していく。

免責事項

本ディスカッションペーパー中、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所その他の機関の見解を示すものではない。

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