経済社会研究所

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No.37 論文要旨

DEAによる日米電気事業の経営効率性計測と比較分析 (767 KB)

Measurement and Comparison of Management Efficiency among Japanese and U.S. Electric Utilities by DEA : Decomposition of Inefficiency

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経営効率性、DEA、Malmquist Index

北村 美香 / 筒井 美樹

本稿では、DEAを用いて日米の電気事業者23社に関して経営効率性の計測と比較分析を行った。効率性指標として、総合生産効率性、技術効率性、資源配分効率性、規模効率性、コスト効率性の計測を行った。
また、Malmquist Indexを計測することにより、生産性の時系列的な比較を行った。さらに、費用最小化を達成するための最適な要素雇用量からみた各投入要素の余剰を明らかにした。その結果、第一に、平均でみた場合両国の技術効率性、資源配分効率性、コスト効率性は米国のそれと同水準ないしは上回ることが明らかになった。よって、日本の電気料金が米国のそれと比較して割高であるのは、少なくとも生産効率性の差からくるものではなく、むしろ生産段階における資本費など投入要素価格の差に原因があると推察される。
第二に、技術効率性の時系列的な変化を表すMalmquist Indexは両国とも計測期間中著しい変化はなく、顕著な技術進歩はみられなかった。よって、今後現在の生産技術を前提とする限り、技術進歩による経営効率性の向上はそれほど期待できないと思われる。
第三に、費用最小化からみた非効率性の最も大きな要因は資源配分の非効率性であり、費用最小化を達成するための最適な要素雇用量からみた余剰に関して両国とも資本が全期間を通してプラスに出ると同時に購入電力量はマイナスに出た。
以上の計測結果は、今後特に日本において、発電部門における競争入札や余剰電力購入を通じて資源配分効率を高めることによりコスト削減に資するとともに、資・機材調達における競争入札の促進による資本コストの節減を通じて、コスト面における一層効率的な経営が実現可能であることを示唆していると考えられる。

わが国電力需要の推移とその構造:時系列分析による検討 (795 KB)

Electicity Demand and the Structure in Japan:An Exammination Using Time Series Analysis

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電力需要、単位根、共和分、エラーコレクションモデル

加藤 久和

本研究は、わが国の電力需要の時系列推移及び電力需要の構造分析に時系列分析の方法を適用し、これを検討したものである。
大口、業務用、小口及び電灯電力需要の4系列に対して単位根検定を行ったところ、これらの系列には単位根が存在するという帰無仮説を棄却できず、また一方で定常であるという帰無仮説は棄却された。また、1970年代の石油ショックによる電力需要に対する構造変化を明示的に考慮してもこの結論は変更されなかった。
さらに、電力需要関数を導出し、電力需要と所得及び価格要因との共和分の関係を検討したところ、その存在を否定することはできず、電力需要関数そのものが長期・安定的な関係を与えることが明らかになった。
この結論を利用して、エラーコレクションモデル及びベクトル自己回帰モデルを推計し、長期・安定的な関係からの短期的な不均衡は大口電力でほぼ2年、電灯電力でほぼ9ヶ月で修正されることを示した。また、インパルス応答関数等による分析から電灯電力需要においては価格要因がGrangerの意味での因果関係を持たないという結論を得た。

東京は過大か −集積の経済と都市規模の経済分析− (1,022 KB)

Is Tokyo Too Large?:An Empirical Analysis of City Sizes in Japan

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都市経済学、集積の経済、最適都市規模

金本 良嗣 / 大河原 透

東京都市圏の過密・過大論を根拠にして、首都機能移転が現実の政策課題として登場している。国土政策の検討のためには、望ましい都市規模とはいかなるものなのかに関する研究が必要になるが、この種の実証研究は十分になされているわけではない。
この論文では、全国の都市圏を対象に集積の経済性を導入した総生産関数の推計を行い、生産活動における集積の経済と通勤費用の増大や混雑などの集積の不経済との綱引きで都市の最適規模が規定されるとの伝統的な都市経済モデルに基づき、都市規模の最適性に関する実証研究を行う。
集積の経済は、人口20万人以下の都市圏ではほとんど出現していないが、20万人以上の都市圏では大きく、とりわけ、人口が20万人から40万人の都市圏では非常に大きい。集積の経済の推定値をもとに、人口100万人以上の17の都市圏について、最適都市規模に関するヘンリー・ジョージ定理の成立性を検討した。
地価総額とピグー補助金総額の比率を取ると、東京都市圏は17の都市圏のほぼ平均に位置しており、比率の比較では東京圏が過大であるとの仮説は支持されない。ただし、絶対額の比較においては東京圏が抜きんでて大きく、東京圏が過大であるという可能性も残されている。

原子力発電新技術のライフサイクル分析 (447 KB)

Life cycle analysis of advanced nuclear power generation technologies

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原子力発電、高速増殖炉、ライフサイクル分析、エネルギー収支、CO2原単位

内山 洋司 / 横山 速一

本研究は、軽水炉と高速増殖炉について燃料の採掘から輸送、精製、それに発電と廃棄物の処理処分に至るすべてのプロセスを対象にライフサイクルにわたるエネルギー投入量とCO2排出量を分析し、原子力発電の技術進歩による環境影響に関して次に示す改善効果を明らかにしたものである。
1. 生産エネルギーと投入エネルギーの比で表わされるエネルギー収支は、軽水炉の場合、ウランの濃縮技術により最も大きな影響を受ける。ワンススルー方式の場合、ガス拡散法ではエネルギー収支は24であるのに対し遠心分離法では82にまで大きくなり、さらに燃焼度を30GWd/tから45GWd/tにまで高めると85に向上する。
2. プルトニウムをリサイクルするプルサーマル方式のエネルギー収支は、ワンススルー方式と比較した場合、ガス拡散法では27と大きいが、遠心分離法になると69と小さい。これは遠心分離法を燃料サイクルに取り入れるシステムでは、プルトニウム利用による濃縮ウランの節約効果よりも再処理などで燃料サイクルを複雑するほうがエネルギーの投入量が多くなるためである。
3. エネルギー収支を最も大きくする発電技術は高速増殖炉で、その値は106と火力や自然エネルギーを含めた発電方式の中で最も優れている。
4. 軽水炉のCO2原単位は、ウラン濃縮をガス拡散法から遠心分離法にすることで半分以下にまで低減できる。高速増殖炉は、CO2原単位をさらに小さくする効果がある。

DSMプログラムの効果評価手法 (744 KB)

Methods for the Evaluation of Demands-Side Management Programs

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DSM、費用対効果、エンドユースアプローチ、米国電気事業

浅野 浩志

一般電気事業者は、設備投資を抑制するために負荷平準化を中心とするデマンドサイド・マネジメント(DSM)のより一層の推進を経営目標としている。電力市場における競争激化に伴い、DSMの費用効果性の評価もより厳密なものが求められる。これまで、主に、計量経済学的手法により時間帯別料金制などの負荷移行効果が分析されてきた。計測通信技術の進展により我が国でもエンドユース実測が可能な状況になってきた。
本調査では、DSMプログラムの費用効果性を評価する3つの手法、すなわち、工学的推定手法、エンドユース実測、計量経済学的手法をとりあげ、米国の分析事例をもとに各種手法の特徴と問題点を明らかにする。最後に我が国での実データーへの適用可能性を検討する。

技術代替を考慮した一般均衡の計算法 (426 KB)

Computing Equilibrium in the General Leontief Model

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一般レオンチェフ・モデル、一般均衡、産業連関分析、降下法

西村 一彦

本研究では、経済システムにおける各産業の技術代替の可能性を包含する一般レオンチェフ・モデルにおいて、均衡解を求める手法を提案する。この手法によれば、経済システムに新技術が導入されたり環境税などの制度的変化がもたらされた場合の構造変化を推定することが可能となり、特に技術評価のための新たな道具立てに貢献するものと考えられる。
提案する手法は、技術的または制度的変化が導入された直後の経済システムの構造がホーキンズ・サイモン条件を満たす場合に適用できる。この場合に、一般レオンチェフ・モデルにおける各産業のコスト最小化行動による技術選択のくり返しという模索過程のシミュレーションが、均衡解をもたらすアルゴリズムとなることを示す。さらに、一般的な技術や制度の導入に関しても考察を行う。

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