要約
東日本大震災の影響により、東京・東北電力管内の供給力が不足し、最大電力を昨夏より15%抑えることが要請されている。現在、家庭や企業の多大なる理解と協力のもと節電が進められており、その効果を量的に把握することは重要である。
2010年の夏を振り返ると、1℃の気温上昇により、東京電力の昼の需要は約3%増加していた。このことは、電力需要が気象条件に左右されやすいことを改めて認識させてくれる。そこで本稿では、天候の違いがもたらす影響をできるだけ取り除いた上で、2011年7月末までの東京電力管内の需要減少量を試算し、次の点を明らかにした。
震災翌週の最大電力は、前年水準を約30%下回っていた。需要減少幅は徐々に小さくなっていったが、6月下旬には再び大きく下回るようになり、7月頭には削減ピークがあらわれた。その背景として、7月を迎えるにあたり節電対策の徹底が図られたことが奏功した可能性も指摘できよう。その後7月末まで、前年比15%以上の削減水準で推移している。
政府により節電が求められている9~20時に着目すると、午前中の減少量がやや大きめであるものの、全般的に節電対策が進んでいる様子がわかる。電力需給の厳しさという点では、午前中や夕方よりも午後に注視が必要であることが示唆される。
以上のように、これまでの実績を振り返るかぎり抑制水準は概ね確保できている。気象庁予報では8月の気温は平年並みとされるが、気温が高い日が続くようであれば電力需要に注意を払う必要があり、また、供給面でも全国的に適正な供給予備率を下回る傾向にあることから、当面の間は節電対策を継続する必要があるだろう。
(なお、本稿は2011年7月29日時点の情報にもとづく)