社経研DP
2026.08
原子力関連規制の効率化に関する諸外国の動向―英国・米国・カナダにおける取り組みの状況(2026年7月時点)―
- エネルギー政策
- 原子力
要約
2025年、英国・米国・カナダの3か国において、原子力関連規制の効率化を目指す動きが相次いで始まった。本ディスカッションペーパーでは、3か国における取り組みの状況を明らかにした上で、共通する傾向やポイントについて考察した。調査・分析にあたっては、各国の取り組みの内容に加えて、一連のプロセス(主な経緯、規制機関の対応ぶり等)にも着目した。また、安全規制やリスク管理の在り方に影響を与えるかどうかにも留意した。
英国では、スターマー首相が設置した原子力規制タスクフォース(NRT: Nuclear Regulatory Taskforce)による最終提言が2025年11月24日に公表された。NRT最終提言を受けた包括的な実施計画として、2026年3月13日、政府は「原子力国家の構築」を公表し、2027年末までに全ての改革を完了させる意向を表明した(法改正を伴う改革については2028年に至るものもある)。原子力規制局(ONR: Office for Nuclear Regulation)は、許認可要件等を定めた「原子力施設の許認可」の改定等、法改正をしなくても実施可能な取組みを中心に見直しを進めている。
米国では、大統領令14300「原子力規制委員会の改革の指令」及び「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力の導入促進法(ADVANCE法)」を踏まえて、原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission)が規則の見直し・改定等を進めている。NRCは、2026年11月までに計21の規則を改定することを目指しており、これまでに2件の改定を完了、11件の改定案を提示した。改定案の中には、原子炉の許認可の見直しや、線量管理における「合理的に達成可能な限り低く(ALARA)」の原則の撤廃(線量限度自体は維持)などが含まれている。
カナダでは、政府横断的に行っている“Red Tape Review”(過度に複雑な規制の見直し)の一環で、カナダ原子力安全委員会(CNSC: Canadian Nuclear Safety Commission)が規制の近代化に取り組んでいる。CNSCが特定した9項目のうち、これまでに5項目が完了し、残る4項目も実施の途上にある。
3か国に共通して、規制の効率化の目的は「便益の追求」であり、各国それぞれ、エネルギー安全保障や経済安全保障、経済成長などを明示している。規制の効率化の意味合いは様々であり、3か国に共通して見られたのは「複雑な規制の簡素化」と「規制のアプローチの見直し」である。各論では「審査期間の短縮」や「次世代原子炉等への対応」が共通していた。3か国における規制の効率化の取り組みはまだ途上だが、規制のアプローチの見直しの内容によっては、リスク管理の在り方そのものに影響しうる。
ただし、原子力規制の効率化に向けたプロセス(特に効率化を進める上での課題の示し方)は国ごとに異なる。英国では、首相が設置した検討チームが、規制機関を含めて幅広く意見照会をした上で、課題を特定している。一方、米国では、連邦政府や連邦議会が、大統領令や法律によって、解決すべき課題と方向性を提示している。またカナダでは、政府から規制機関に対してレビューを指示しているものの、課題の特定自体は規制機関自身が行っている。
※本ディスカッションペーパーは、「原子力関連規制の効率化に関する諸外国の動向―英国・米国・カナダにおける取り組みの状況(2025年12月時点)―」(電力中央研究所社会経済研究所ディスカッションペーパーSERC25006)に対して、その後の動向を加筆したものである。
免責事項
本ディスカッションペーパーは広く意⾒やコメントを得るために公表するもので、意⾒にかかる部分は筆者のものであり、電⼒中央研究所または社会経済研究所の⾒解を示すものではない。