要約
2025年1月20日に発足した共和党の第2次トランプ政権は、国産エネルギー資源・電力インフラ・重要鉱物の開発を加速し、さらに化石燃料の輸出を拡大するべく、大統領令のもとで施策を推進している。本稿では政権発足以降の具体的な動きを整理する。
国内政策では、トランプ大統領は就任日に「米国のエネルギーの解放」および「国家エネルギー緊急事態」に関する大統領令に署名し、その後、石炭、原子力発電、電力系統信頼度、重要鉱物等に関する大統領令も発出した。さらに、2025年7月4日にはエネルギー供給拡大の支援策を含む「1つの大きく美しい法」を成立させた。これらの下で、第2次トランプ政権は連邦公有地・水域における石油・天然ガス開発向けのリースの推進、液化天然ガス(LNG)輸出の新規認可の再開、既設石炭火力発電の維持への補助、原子力発電の新設および再稼働への融資、重要鉱物の確保に対する資金支援といった供給強化策を実施している。特に原子力発電と重要鉱物については、政府が支援対象企業の株式を一部取得する選択肢が支援スキームに盛り込まれており、民間企業に対する国家の関与を強めている。データセンター建設による電気料金の高騰懸念に対しては、テック企業に費用の自主的負担を求める取り組みを進める一方、イランへの攻撃を契機とするガソリン・軽油価格の高騰に対しては、戦略石油備蓄の放出などで対応しているが、価格高騰が収束せず、政権への批判が高まっている。
対外政策では、トランプ大統領は化石燃料の純輸出国としての立場を対外的な影響力の源泉と位置付ける「エネルギードミナンス」を掲げ、関税を巡る二国間の「ディール」を通じて、日本・韓国・EUからは米国産LNG等の輸入拡大の意向を、さらに日本と韓国からは米国内へのエネルギー投資に対する投資計画を引き出した。日韓の投資計画は具体的には、データセンターに併設する天然ガス火力発電、原子力発電(日本は小型モジュール炉、韓国は大型炉)、原油・LNGの輸出インフラなどである。他方、2026年2月28日に開始した米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機とするホルムズ海峡の実質封鎖やイランの攻撃による湾岸諸国のエネルギー供給施設への重大な損傷で、原油・石油製品・LNGの世界的な供給ショックが発生した。直近では、中東からの輸出量は原油を中心に回復傾向にあるが、今後の展開は米・イラン交渉や軍事情勢次第であり、先行きは見通せない。米国はこの間、需給緩和のためにロシア・イランによるエネルギー輸出への制裁を一時的に解除する一方、原油・石油製品・LNGの供給源としての自国の重要性を高めている。
※本ディスカッションペーパーは、「米国トランプ政権によるエネルギー・環境政策の見直しの行方(2026年5月18日版)」(SERC Discussion Paper 26001)のうち、エネルギー政策に関わる部分に対して、その後の動向を加筆したものである。気候変動対策の見直しの動向については、「米国トランプ政権による気候変動対策の見直し(2026年10月6日時点)」(SERC Discussion Paper 26006)を参照されたい。
免責事項
本ディスカッションペーパーは広く意⾒やコメントを得るために公表するもので、意⾒にかかる部分は筆者のものであり、電⼒中央研究所または社会経済研究所の⾒解を示すものではない。