社経研DP

2026.10

米国トランプ政権による気候変動対策の見直し(2026年10月6日時点)

  • 気候変動

SERC Discussion Paper 26006

要約

 2025年1月20日に発足した共和党の第2次トランプ政権は、民主党のバイデン政権が進めた気候変動対策を大幅に見直してきた。本稿では政権発足以降、具体的にどのような変化があったのかを整理する。

 バイデン政権は国内において、①既存法の権限を用いて火力発電所や新車販売に排出規制を課し、②連邦議会を通じて成立させたインフレ抑制法(IRA)によって、脱炭素化への減税措置等を導入した。これに対して、トランプ政権は化石燃料を中心とする国産のエネルギー資源の開発を加速させるべく、①バイデン政権の排出規制を撤回し、規制の前提となる温室効果ガスの危険性認定も撤回した。他方、②IRAは2025年7月に成立した「1つの大きく美しい法」で見直され、電気自動車への減税措置は早期終了し、太陽光発電と風力発電の新設への減税も適用期間が大幅に短縮されたが、原子力発電・炭素回収利用貯留(CCUS)・バイオ燃料への減税は維持または拡大・延長となった。

 対外的には、バイデン大統領はパリ協定に復帰し、2030年に2005年比で50~52%減、2035年に61~66%減との削減目標(NDC)を定めたが、トランプ大統領は就任日の大統領令でパリ協定からの再脱退を表明した。さらに、2026年1月には国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの脱退を表明した。

 このように、トランプ政権はバイデン政権の脱炭素化を中心とする政策の撤回・見直しを完了しつつある。IRAのうち撤回の対象とならなかった部分、一部の州政府の政策、ビッグテック企業の脱炭素技術(原子力発電を含む)への投資などによる温室効果ガスの排出削減は続くものの、バイデン政権が掲げた削減目標の達成からは程遠く、2050年ネットゼロ排出と現実の乖離が広がると予想される。

※本ディスカッションペーパーは、「米国トランプ政権によるエネルギー・環境政策の見直しの行方(2026年5月18日版)」(SERC Discussion Paper 26001)のうち、気候変動対策の見直しに関わる部分に対して、その後の動向を加筆したものである。エネルギー政策の動向については、「米国トランプ政権のエネルギー政策の動向(2026年10月16日時点)」(SERC Discussion Paper 26005)を参照されたい。

免責事項

本ディスカッションペーパーは広く意⾒やコメントを得るために公表するもので、意⾒にかかる部分は筆者のものであり、電⼒中央研究所または社会経済研究所の⾒解を示すものではない。

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