電気新聞ゼミナール
2018.09.05
諸外国の再生可能エネ早期接続措置と比べて、日本版コネクト&マネージの特徴は何か?
- 電気事業制度
- 再生可能エネルギー
【各国で広がる新規接続条件緩和措置】
再生可能エネの新規接続条件を緩和する日本版コネクト&マネージ(C&M)が始まった。「日本版」と強調するのは、諸外国にも類似の制度が存在するためだ。では、諸外国との相違点は何か。
本稿では、日本が参考にした英国、アイルランド、ドイツと比較した特徴を①系統増強との関係、②電力流通設備の効率的運用(空き容量活用)、③出力制御時の補償の3点から整理する。なお、③は次回(9月19日)の本欄でご紹介する。
【系統増強の回避を前提とする日本】
まず、①と②についての日本版C&Mの特徴は、①今後の系統増強を費用便益評価等に基づき判断するとしながらも、いつ、どの程度系統増強されるのか不明である点と、②日本版ノンファーム型接続導入にある(表)。
日本版C&Mは、
(A)想定潮流の精緻化:すべての電源が定格出力ではなく実際の利用率に近い想定で空き容量を算定
(B)N―1電制:1回線故障(N―1故障)の際、瞬時に特定の電源を解列(電制)し、事故後の過負荷等を防止することで、電制を前提としない場合に比べて、事故前の運用容量を拡大する手法
(C)日本版ノンファーム型接続:送電容量枠は持たず、平常時でも出力抑制を条件に接続を認める手法
から構成される。
【増強前提の英国】
他方で、前述の三ヶ国では、基本的に系統増強を前提として、新規電源の早期接続を行っている。これは新規接続が増加する中で、信頼度基準を維持するための系統増強の実施が費用便益評価として定着しているからだ。
11年からC&Mを本格実施している英国では、新規発電設備に最も近い広域送電系統の接続点までのローカル系統の設備増強が終了すれば、従来は必要とされた広域送電系統全体のセキュリティ等の維持に不可欠な信頼度基準を満たすための増強完了を待たずに、接続が認められる。その際、早期接続と系統増強についての費用便益が評価されている。
【今後のファーム容量を事前提示する愛国】
またノンファーム型接続として、日本が手本としたアイルランドでは、その定義が異なる点に留意が必要だ。
同国では、各電源が出力可能な最大電力(MEC)とファーム接続の程度を表す容量(FAQ)が定められる。FAQは、系統増強工事の進展で増加し、工事完了でMECと等しくなる。FAQを上回る部分をノンファーム接続とし、出力制御による発電機会の損失が生じても、ノンファーム部分には金銭補償はない。ちなみに、英国では、こうしたノンファーム部分はなく、事前に定められた電源別の契約電力を超えない範囲での接続しか認められていない。
同国では風力発電急増の懸念から、無秩序な新規接続を03年に停止し、13年3月まで多様な論点を包括的に検討してきた。具体的には、国全体の送電設備計画を再検討し、各電源にFAQが今後どの程度増えるのか事前に提示している。
これに対して、日本版ノンファーム型接続では、当該電源の出力制御を無補償で行う点は同じだが、今後のFAQ見通しの提示が困難という点で異なる。日本版C&Mは、FITによる大量の新規接続申し込みを停止せずに、暫定的にこれを継続する施策と言える。
電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 上席研究員
朝野 賢司/あさの けんじ
2007年入所。専門は環境経済学、再生可能エネルギー政策。博士(地球環境学)
電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 主任研究員
星野 光/ほしの ひかる
2017年入所。専門は電力エネルギーシステム、制御応用。博士(工学)
電気新聞2018年9月5日掲載
*電気新聞の記事・写真・図表類の無断転載は禁止されています。