社経研DP

2022.02.14

EUにおける「タクソノミー」の動向―スクリーニング基準の策定状況と今後の見通し(2022年2月時点)―

  • 気候変動

SERC Discussion Paper 21005

要旨

 2020年7月12日、「持続可能な投資の促進のための枠組み」に関するEU規則2020/852が発効した。この規則は「経済活動が、環境的に持続可能かどうかを判断する基準」(EUタクソノミー)の確立を目的としている。EU域内の金融機関および企業は、本規則に基づいて情報開示が求められる。
 本規則では、環境的に持続可能な経済活動の基準として、①1つ以上の「環境目的」に貢献すること、②他の「環境目的」を著しく阻害しないこと、③環境以外の価値(人権等の保護)を守ること(ミニマムセーフガード)、④スクリーニング基準を遵守すること、の4つを満たすことが定められた。「環境目的」としては、気候変動の緩和、気候変動への適応、水および海洋資源の持続可能な利用と保全、循環経済への移行、汚染の予防と管理、生物多様性および生態系の保全と回復の6つが定義された。
 スクリーニング基準は、個別の経済活動が、特定の環境目的に貢献するか/阻害しないかを判断するための基準である。2021年12月29日に発効した委員会委任規則2021/2139は、気候変動の緩和および気候変動への適応に関するスクリーニング基準を定めた。この中では、排出量が大きい、あるいは排出削減に寄与する9セクター(電力・ガス、運輸、製造業等)88の経済活動について基準が定められたが、セクター横断的に一律の考え方があるわけではなく、個々のセクターや経済活動の特性を踏まえたものになっている。
 また、2022年2月2日、欧州委員会は、委員会委任規則2021/2139に含まれていなかった、原子力と天然ガスに関するスクリーニング基準の採択を決定した(EU理事会と欧州議会の異議申し立てがなければ発効)。排出量に加えて、原子力については安全・規制や廃棄物・廃炉に関して、天然ガスについては既存の多排出な設備の置換や再生可能ガス/低炭素ガスへの転換などについて、基準が定められた。

※本ディスカッションペーパーは、2021年8月30日に発表した「EUにおける『タクソノミー』の動向-スクリーニング基準の策定状況と今後の見通し-」(SERC Discussion Paper 21003)を、その後の動き(欧州委員会によるスクリーニング基準の採択)を踏まえて、内容を更新したものである。

※本ディスカッションペーパーに関連する研究成果は、以下の研究報告にまとめています。合わせてご覧ください。
 ・EUタクソノミーにおける気候変動の緩和 -主要セクターのスクリーニング基準の分析-(2022年2月発行)
 ・EUタクソノミーにおける天然ガスと原子力―「トランジショナルな活動」に位置づけられた経緯とスクリーニング基準の分析―(2023年4月発行)

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