社経研DP

2021.02.16

英国における新設原子力発電所の資金調達手法としての規制資産ベース(RAB)モデルの導入をめぐる議論

  • 電気事業制度
  • 原子力

SERC Discussion Paper 20009

要約

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 本稿の内容は、電力経済研究No.68「海外における原子力発電への期待と課題」に掲載いたしました。
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 英国は、気候変動への対応に向けて、原子力発電所の新増設を進めることを計画しているが、電力市場が自由化され、発電事業が市場リスクに晒される中で、建設費の上振れリスクを投資家が負う仕組みであったこともあり、新規に原子力発電所を建設するのに必要な資金調達のコストが大幅に増加していたことが問題となっていた。そこで英国政府は、主に資金調達費用の抑制を図るため、新規の原子力発電所を対象に、規制資産ベース(Regulated Asset Base, RAB)モデルと呼ばれる資金調達手法を適用することを検討してきた。RABモデルは、個別の投資プロジェクトに対し、基本的にはコストの変化を反映した総括原価方式による規制料金を通じて需要家(消費者)から費用を回収するスキームである。これにより投資家のリスクを軽減することで資本コスト、ひいては総費用を安くすることが期待されている。ただし、英国政府が2019年7月に公表した原子力RABモデルの概要案では、総括原価方式による規制料金での回収を基本としつつも、一定の範囲を超えて費用が増加した場合には、投資家と消費者で費用の増加分を負担するリスク分担のスキームも組み込まれていた。英国政府の概要案に対するコンサルテーション(意見募集)では、様々な意見が寄せられ、RABモデルで原子力の新設を進めることに反対する意見も少なからずあったものの、さらなる検討が進められることになった。現時点では、制度の詳細設計において未定の部分が多く、今後の検討結果次第の面もあるが、再生可能エネルギーのコストが低下する中で、新規の原子力発電所にRABモデルを適用することによって、リスクを負担する消費者に、支払う金額に見合う価値(Value for Money)が提供されることをいかに示していくのかが焦点となる。

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