社経研DP
2012.10.26
環境自主行動計画の実態と評価,今後の活用の論点整理―自主的取り組みの事例分析 その3―
- 気候変動
- 企業・消費者行動
SERC Discussion Paper 12008
要約
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本稿の内容は,書籍『温暖化対策の自主的取り組み 日本企業はどう行動したか』(エネルギーフォーラム社,2013.3)の第4章に掲載されました。
環境自主行動計画とは,業界団体や事業者がそれぞれの経済活動における環境保全活動として具体的な行動目標を定め,自発的に取り組むものである.日本では,1996年に経団連の呼びかけで36業種が温暖化防止のための自主行動計画を策定して以来,国内の温暖化対策の中心的役割を担うものとして位置づけられてきた.本稿では,業界団体が掲げる環境自主行動計画の全体像を把握するとともに,本計画の下で温暖化防止活動に取り組む13の事業者団体へのインタビュー調査を通し,自主行動計画が実際にどのように機能し,いかなる効果をもたらしているかを確認することで,以下の知見を得た.
1. 自主行動計画の目標水準は,業界事情を踏まえた技術的裏付けの下で設定されており,実現の確実性・妥当
性が高いものが選ばれている.
2. 目標水準は公開され,政府のレビュープロセスによって適宜見直され,適正な水準へ修正を図る制度的な仕
組みとなっている.
3. 2012年までの数値目標は,2011年の震災前は達成する見込みが高かったが,震災の影響によって状況は様
変わりした.ただしこれは自主行動計画の失敗ではなく,未曾有の災害ではいかなる政策手段も数値目標の
達成が困難なことを示すものである.
4. 自主行動計画の機能は,業界団体の特性により様々だが,大手企業のシェアが高くかつ業界団体の影響力が
大きい業界においては,業界レベルでのPDCA体勢が構築され,企業の協力・連携や情報交換を促進するな
ど,企業の「行動」を誘発する効果があった.
従来はエネルギー消費量ないしCO2排出量といった企業活動の「結果」に注目した評価が多かったが,自主行
動計画が果たしてきた役割を理解するには,上記4)のような,「行動」面にも着目する必要がある.本稿で
は,この「行動」面に着目した評価を通して,自主行動計画の意義を考察した.