社経研DP
2012.06.12
事業所アンケート調査に基づく2011年夏の節電実態(その2)―北海道および中西日本地域の集計結果―
- エネルギー政策
- エネルギー需要
要約
本稿は,当所が2011年11~12月に全国の事業所約28,000件に対して実施した昨夏の節電実態に関する事業所アンケート調査から,北海道および中西日本地域の集計結果を取りまとめたものである。
東日本地域との比較を通じた分析から,以下が明らかになった。
●2011年の夏季最大電力削減率と使用電力量の削減率は,東日本では平均17%程度,北海道・中西日本では平均5%程度の削減率であった。
●昨夏においては,電力需給ひっ迫の程度が厳しく電気事業法27条による電力使用制限令が発令された東日本と比べると,北海道・中西日本では各種の節電対策の実施率は低く,取り組みの程度も弱かった。
●東日本と比べて北海道・中西日本で特に実施率が低かった対策としては,照明間引き,自家発電設備の活用,時間シフト対策があげられる。照明間引きは,東日本では90%程度の高い実施率であるのに対して,北海道・中西日本では60%前後の実施率であり,間引きを実施した事業所における間引き率にも10%程度の違いがあった。また,大口工場での自家発電対策と夜間・早朝シフトの実施率には,東日本と北海道・中西日本との間でそれぞれ20%程度と35%程度の差があった。ただし,木・金シフトは北海道・中西日本でも広く実施されており,大口工場での実施率は34%であった。
●北海道・中西日本では,東日本より節電対策に要した費用が小さかった。特に大口工場の費用は東日本の半分以下であり,これは自家発電対策費の差に起因していた。また,節電による業務活動への悪影響については,総じて北海道・中西日本よりも東日本で強く認識された。
以上より,昨夏における北海道・中西日本での節電実態を総括すると,総じて東日本より節電取り組みの程度が弱く,特に自家発電対策や時間シフトといった負担の大きい対策があまり実施されなかったことから,節電に伴う費用負担や業務影響が東日本ほど大きくなかった反面,節電効果も小さかったといえる。
本調査の結果を踏まえると,今後できる限り負担の少ない方法で必要な節電を進める上では,(1)照明間引き対策と(2)地道な省エネ推進が重要であると指摘できる。
照明間引きは,業務部門の主要な節電対策である。東日本では昨夏大幅な間引きが進められたが,悪影響がほとんど認識されておらず継続意向も高かった。他方,北海道・中西日本ではあまり取り組まれていなかった。過度な照度削減は業務効率や安全性に問題を生じさせるため避けなければならないが,間引きを実施した事業所からは「照明を半分に間引いたが慣れれば何の問題もない」「これまでが明るすぎたことを痛感した」といった声が多く出されており,既存の照明設備が過剰である場合も多いと考えられる。したがって,今後の北海道や中西日本において,できる限り無理のない節電を推進する上で,照度の見直しと照明間引きの検討は重要であろう。
また,昨夏は「緊急節電」対策が進展した一方で,外気導入量の制御など「省エネ(=高効率化)」対策の実施率は低く,データを用いたエネルギー管理の実施率も低かった。空調設備を例にとると,本調査で触れた外気導入量の制御の他にも,熱源の冷水出口温度の適正化,台数制御方式の適正化,運転時間の見直しなど,見逃されがちな対策は多い。これらは全て設備投資を要しない運用対策であり,また事業所の経費削減や中長期的なCO2削減を進める上でも効果的なものである。喫緊の節電対策を無理のないものにするためにも,エネルギー管理体制の強化と基本的な対策の見直しを進めることが重要であろう。
なお,本アンケート調査の概要ならびに東日本地域の分析結果については,下記報告書を参照されたい。
「事業所アンケート調査に基づく2011年夏の節電実態―東日本地域を中心とした分析―」,
電力中央研究所研究報告Y12002,2012年5月.