社経研DP

2019.02.05

米国における気候変動対策の行方-トランプ政権3年目の現状整理-

  • 気候変動

SERC Discussion Paper 18003

要約

 本稿では、米国における気候変動対策の現状を、連邦行政府(トランプ政権)だけではなく、三権分立(行政、立法、司法)と連邦制(連邦政府、州政府)の全体を俯瞰して整理したうえで、今後の見通しを考察する。
 2017年1月に発足したトランプ政権は、オバマ前政権が定めた温室効果ガス排出の国内規制の撤廃・見直しを進め、前政権が締結したパリ協定からの脱退意向を表明した。他方、連邦議会では、2018年11月の中間選挙の結果、2019年からの第116議会では下院で民主党が多数派となり、Green New Deal論の台頭を受け、気候変動に関する特別委員会が設置された。連邦最高裁判所では、保守的な判事が多数を占める状況になり、温室効果ガス排出規制等の気候変動関連の訴訟の行方に大きな影響を及ぼしうる。一部の州は、パリ協定支持を表明し、キャップ&トレード型の排出量取引や再エネ・原子力の支援策などの独自政策を進めている。
 当面は、連邦行政府による政策の撤廃・見直しとそれに反対する対する訴訟及び連邦議会下院と一部の州における政策の推進が並行したまま、2020年の大統領選挙を迎えることになる。大統領選挙の結果は、米国の気候変動対策の行方に大きな影響を与える。

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