社経研DP

2019.01.16

産業連関表における電動車部門の推計と電動車の生産台数シェア上昇のシミュレーション分析

  • エネルギー需要
  • 経済・社会

SERC Discussion Paper 18001

要約

 地球温暖化対応に関する意識の高まりを背景に、今後はハイブリッド車や電気自動車などの電動車が普及していく可能性が高い。内燃機関車と電動車では車体構成が異なるため、将来的に、乗用車の生産が国内産業に与える影響に変化が生じることが考えられる。特に、日本においては、自動車産業は国内経済を支える重要な産業であり、電動車の生産拡大が国内産業に及ぼす影響への関心が高い。
 本稿では、内燃機関車や電動車の生産による国内産業への影響を、産業連関表を用いた均衡生産高モデルから求められる生産波及効果で評価するため、SNA産業連関表の部門として、車種別の乗用車部門(内燃機関車部門、ハイブリッド車部門、プラグインハイブリッド車部門、電気自動車部門)を推計した。ここでは、電動車向け電気機器(モーター、パワーコントロールユニット、二次電池)を、該当部門の投入構造に反映させる一方、電気自動車部門においては、エンジンが不要になることによる、投入構造の変化も考慮した。
 加えて、シミュレーション分析では、単位当たりの原材料投入量や原材料価格を一定に、日本国内における電動車の生産台数シェアが20%から70%(ハイブリッド車が20%から40%、電気自動車が0.3%から30%)となる前提の下、電動車向け電気機器が、全て国内品の場合と、全て輸入品の場合の2つのケースの生産波及効果を評価した。結果、前者では、エンジンに関わる自動車部品・同附部門が減少要因となる一方、二次電池などが含まれる電気機械部門が増加要因となり、生産波及効果(合計)は1.1兆円増加、電力投入量(合計)は1.3億kWh増加と、いずれも僅かに増加する。後者では、電動車向け電気機械の生産波及効果が国外で生じ、自動車部品・同附部門の減少影響が国内に波及するため、生産波及効果(合計)は4.9兆円減少、電力投入量(合計)は57.6億kWh減少と、いずれも減少に転じる。以上のように、内燃機関車に代わり電動車の生産が拡大する場合には、電動車向け電気機械の調達先が国内か国外かで、国内産業全体へはプラス影響とマイナス影響の両方がありうる。

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