研究資料

2019.03

英国の小売市場における時限措置としてのプライスキャップ規制の問題点

  • 電気事業制度

報告書番号:Y18504

概要

背景

 わが国では、経過措置解除に向け、諸外国における小売全面自由化後の料金規制の動向が参照されている。このうち、2002 年に小売料金の経過措置を解除した英国では、2017 年から時限措置として小売の標準料金プランに上限値を設ける規制(プライスキャップ規制)を適用しているが、その内容や影響については十分に理解されていない。

目的

 英国において、自由化後にプライスキャップ規制が導入された背景および制度設計の内容を示した上で、こうした規制が需要家保護に与える影響のみならず、需要家のスイッチング行動や自由化市場にもたらす影響について示す。

主な成果

1. 需要家のニーズに対応した料金プランの多様性の縮小

 プライスキャップ規制の上限値の設定においては、料金の多様性を認めるために「ヘッドルーム」注)が考慮された。しかしながら、ヘッドルームは十分な水準とは言えず(図1①)、実際には改定を余儀なくされた料金プランがある。その結果、標準料金プランの基本料金が上昇し(図1②)、需要規模の小さい需要家の料金負担が増加する例が見られる。自由化以降、需要形態に応じた料金プランが提示されてきたが、プライスキャップ規制によって、料金プランの多様性は縮小せざるを得なくなっている。

2.スイッチングのインセンティブの低下

 プライスキャップ規制によって、料金プラン間の格差が縮小することから(図2①)、スイッチングで得られる期待利益(料金削減のメリット)が減少し、その総額を推定すると市場全体で年額約13 億ポンドとなった。その一方で、規制導入の検討を契機に実施された英国の需要家アンケート調査によると、スイッチングの主なインセンティブは料金水準の変更に対する期待であることが明らかになっている(図3, 図4)。つまり、プライスキャップ規制の適用期間中、料金プラン間の格差が縮小することによって、需要家のスイッチング行動は一層低迷すると考えられる。
3.プライスキャップ規制による自由化の効果への弊害

 プライスキャップ規制は標準料金プランのみを対象としているため、市場最安料金を選択していた需要家層の料金水準の上昇が予想される。プライスキャップ規制導入の背景には、需要家の過剰な支払いが年平均約14 億ポンドに上ることが指摘されたためであったが、仮に、市場最安料金がこれまでよりも15%上昇すると、これを選択していた需要家の負担は総額で約14 億ポンド増加すると推定される(図5)。これまでに市場最安料金は約20%の値上げをしたこともあり、これらを総合的に評価すると、プライスキャップ規制の影響は料金抑制による便益のみではなく、損失も考慮する必要があると言えよう。

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