研究資料

2020.03

産業部門における電気加熱の生産性便益ー評価方法の現状と課題ー

  • エネルギー政策
  • 企業・消費者行動

報告書番号:Y19505

概要

背景

 産業部門の脱炭素化には、再生可能エネルギー電源等の導入拡大と生産工程における熱需要の電化が有効であると考えられる。電気加熱に対する設備投資を促すためには、生産工程に電気加熱を導入した際のランニングコスト削減や生産効率改善といった便益について十分に理解される必要がある。

目的

 電気加熱の導入による省エネ効果や生産改善効果の評価事例を収集し、評価方法や結果について傾向把握するとともに、生産性便益の評価方法について改善点を考察する。

主な成果

 日本エレクトロヒートセンターの機関誌『エレクトロヒート』にて2016~2019年に公表された計70件の事前・事後評価事例を傾向分析したところ、以下の結果を得た。

1.電気加熱の種類別の省エネ・生産性便益の傾向:省エネ効果の指標として採用されやすいエネルギー使用量削減率やランニングコスト削減率について評価結果を報告した事例を集計したところ、ヒートポンプやMVRに関する事例が多めであった。一方で、生産性便益の中でも定量評価事例が多い加熱時間短縮効果については、赤外・遠赤外線加熱、マイクロ波加熱、高周波誘電加熱、誘導加熱など電磁波加熱の評価事例や、抵抗加熱、過熱水蒸気加熱の評価事例に関して見られた。特に短縮効果が高いのは電磁波加熱の評価事例であった。

2.電気加熱の生産性便益の評価項目や方法:電気加熱の生産性便益について、「生産工程」、「運用保守」、「作業環境」に分類して整理したところ、運用保守や作業環境の改善に関する報告例が少なめであった。理由として、電気加熱の種類によって生産性便益が異なる点や、評価者が運用保守・作業環境に関する便益を評価対象に含めていない点が考えられる。次に、生産性便益を「金銭評価」、「非金銭評価」、「定性評価」に分類して整理したところ、金銭評価と比べて非金銭評価・定性評価の事例が多い傾向が見られた。電気加熱の導入促進のためには、定量評価が比較的しやすい省エネ便益のみを評価対象とするのではなく、加熱時間短縮による人件費減など生産性便益を含めた包括的な評価が必要である。

今後の展開

 生産性便益の高い電気加熱の普及を促すため、作業環境改善など定量評価が困難な生産性便益について評価方法を検討する。

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