研究資料

2020.03

アンサンブル学習の予測有効性についてー電力需要予測を対象とした検証ー

  • エネルギー需要

報告書番号:Y19511

概要

背景

 近年、訓練用データをもとにモデルを構築し、未知データを予測するために機械学習を用いたデータ解析に注目が集まっている。その中で、複数の学習器(弱学習器)1)について訓練を行い、それらを結合させることで、予測精度の改善を図る「アンサンブル学習」という方法が活用されている。

目的

 アンサンブル学習を電力需要予測に適用し、単一学習器との予測精度を比較することで、アンサンブル学習の特徴を把握するとともに、その有効性について検証を行う。なお、本研究では、予測精度そのものを対象とせず、予測精度の比較に焦点を当てる。

主な成果

アンサンブル学習(とそのアルゴリズム)の概要

 アンサンブル学習は、複数の学習器(弱学習器)について訓練を行い、それらを結合させ、予測精度に優れた学習器(強学習器)に近づけるための学習アルゴリズムである(図1)。有名なアルゴリズムとして、バギング(Bagging)とブースティング(Boosting)の2 つが挙げられる。バギングでは、統計学で用いられるブートストラップ法を用いて、訓練用データの部分集合をブートストラップ標本として生成することで、複数の弱学習器を生成し、それらを結合することで予測を行う(図2)。一方、ブースティングは、従前の学習結果をもとに、弱学習器の訓練方法を変えることで、全体の予測結果を改善していく逐次アルゴリズムである(図3)。

電力需要予測の精度比較

 本研究では、需要予測に電力広域的運営推進機関で公表されている1 時間毎の電力需要(MW、東京エリア、2016/4/1~2019/3/31)と気象庁が公表している1 時間毎の気象データ(東京)を用いる。また、先行研究と同様に、弱学習器としてニューラルネットワークを採用し、アンサンブル学習を試みる。アンサンブル学習による予測結果を表1 に示す。表1 より、アンサンブル学習を適用することで、単一学習器(Single)と比較して、予測誤差(RMSE, Root Mean Squared Error)の改善がみられた。また、月別、曜日別、時間別に予測誤差の分布をみると、アンサンブル学習を用いた予測の方が単一学習器よりも、誤差のばらつきが小さくなり、予測精度の改善がみられた。特に、単一学習器の予測誤差が大きくなる時点で、改善傾向が顕著にみられた。

本研究で得られた示唆

 今回の分析から、アンサンブル学習を適用することで、単一学習器では予測が難しい時点でも、複数の学習器を組み合わせることで、予測誤差が改善する可能性が考えられる。ただし、多くの弱学習器が必要となる場合には、単一学習器よりも計算負荷が大きくなる点に留意する必要がある。さらに、アンサンブル学習では複数のモデルを集約するため、モデルの解釈性を欠くことになり、これらの問題を改善していくことが、今後重要となる。

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