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社会経済研究所 研究資料

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研究資料 詳細情報 Detailed Information

報告書番号 Report Number
Y19513
タイトル Title
人口減少下における地域インフラサービスの持続可能性ー分野横断的視点による現況と課題の整理ー
概要 Abstract ※図表や脚注は「研究資料全文」に掲載しております

背 景

 人口減少やこれに伴う経済規模の縮小を視野に入れたインフラの維持・補修策の検討は、インフラサービスの事業者にとって共通の課題となっている。社会生活に不可欠な各種のインフラサービスの維持については、既に事業経営上の問題が顕在化している事業分野もあり、その持続可能性に向けた議論や具体的な取り組みも進んでいる。また、地域のインフラサービスの維持については、人口と都市機能を集中させることによって、住民当たりの費用低減を図ることが処方箋の一つとして示されており、多くの地域において、都市の人口密度の上昇を通じてインフラサービスの効率性を高める「コンパクトシティ」への取り組みが始まっている。

目的

 人口減少下における、インフラサービスの事業経営上の課題、課題解決の取り組み等を分野横断的に整理し、コンパクトシティをはじめとする国内の国土構造や地域経済全体の持続可能性に関する議論を踏まえることによって、将来の地域におけるインフラサービスの維持方策を提示するための基礎資料とする。

主な成果

1. 人口減少下におけるインフラサービスの動向

 現状の人口減少地域において現出しているインフラサービスの課題を、特定地域における事業からの退出障壁の高さに着目して整理した。退出障壁が低い乗合バス、ガソリンスタンド等は、既に、人口減少地域における撤退や縮小・廃止等が起こっている事例が見られる(表1)。
 一方、制度上の規定から特定地域における事業からの退出障壁が高いと考えられるインフラサービスについては、人口減少地域においてもサービス水準は維持されているものの、供給エリアの小さい水道や下水道の事業者の中には、需要減少による収益悪化から、維持費用を料金収入で回収できていないものが存在する。また、供給エリアの大きい電力や電気通信の基本電話サービス、人口密度が高い地域を供給エリアとする都市ガスでは、現状では人口減少が収益に与える影響は水道や下水道と比較すると小さいと考えられるものの、長期的な人口減少の加速と競合サービスの出現等を背景に、料金制度や供給義務のあり方についての議論が行われている。

2. 人口減少下におけるインフラサービスの維持方策

 インフラサービスの多くは固定費用が大きいため、需要の減少が平均費用(単位費用)の増加要因となるという共通の特徴を持っている。したがって、事業者にとっての、人口減少地域におけるインフラサービスの維持の方向性は、平均費用の増加を補うだけの「(1)供給の効率化」を進めるか、需要減少を補うだけの 「(2)収入の確保」を実現するか、収入の減少に合わせて 「(3)サービスの縮小」を図るか、あるいはこれらの組み合わせになる(図1)。これらの具体的な取り組みについては、様々なインフラサービスにおいて実施・検討されているが、分野横断的には表2 のように整理できる。人口減少地域で、インフラ維持のために検討あるいは実施されている取り組みの中で、広域化、マルチ・ユーティリティ、官民連携(PPP)、代替手段の導入といった、供給の効率化につながる取り組みは、経済厚生の点では社会的に最も望ましく、事業者がこれらの取り組みを進めやすい制度環境を整えるべきである。しかし、供給の効率化は、これだけで人口減少による採算性の悪化を補うことができるという保障はないため、人口減少地域におけるサービス維持の問題を直接解決する手段になるとは限らない。
 一方で、事業者にとって、地域のインフラサービスを維持するための料金値上げなどによる収入の確保や、減少した収入に見合うサービスの縮小は、サービスを維持するための実効力を持つ。そして、地域におけるインフラサービスを維持するための供給水準とサービス料金、事業の維持を可能にする補助の規模等は、自治体と事業者の協議を通じて決定されることが多い。

3. コンパクトシティとインフラサービス

 コンパクトシティは、都市の人口密度の上昇を通じて、都市におけるインフラサービスの効率性を高めようとする試みであり、サービスの供給地域に関する選択と集中を通じて、供給の効率性を高める機能を持っている。都市のコンパクト化は、国内の国土構造の持続という大局的な視点から行われている取り組みであることから、インフラサービスの事業者が地域におけるサービス維持を考える際にも、自治体との連携を図りながら、コンパクトシティと整合的な対応を取る必要がある。 具体的には、住民の人口集積を促すような地点別料金や地点別サービス水準といった、コンパクトシティの形成と親和性の高い供給手法の導入が考えられる。それぞれのインフラサービスにおいて、供給手法を通じて都市構造の変化を促す視点を持つことは、長期的なインフラサービス全体の効率的な供給にもつながることになる(図2)。

今後の展開

 人口減少下における持続可能なインフラの供給方策を示すために、コンパクトシティ等の長期的な取り組みと整合的なインフラ投資促進策や、インフラサービスの供給者間における協調方策のあり方を検討する。

報告書年度 Report's Fiscal Year
2019年度
発行年月 Issued Year / Month
2020年3月
報告者 Author
田口 裕史
キーワード Keywords
人口減少、インフラストラクチャー、コンパクトシティ、自治体

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