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社会経済研究所 研究資料

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研究資料 詳細情報 Detailed Information

報告書番号 Report Number
Y21503
タイトル Title
電動車と内燃機関車の製造と走行に伴うGHG排出量評価−事業用火力発電比率に応じた比較分析−
概要 Abstract ※図表や脚注は「研究資料全文」に掲載しております

背 景

 日本のエネルギー政策として実施されている燃費基準規制では、自動車メーカーに対して、燃費と電費の向上や、電動車(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車など)の国内販売比率を高めることが求められている。電気自動車は電力をエネルギー源として走行するため、走行時は温室効果ガス(GHG)を直接排出しないが、間接的にはGHGが排出される。また、電動車には駆動用の二次電池が搭載されていることから、製造に伴うGHG排出量が多くなることが指摘されている。エネルギー政策や産業政策を検討する上では、電動車の普及を見据えて、乗用車の製造と走行に伴い生じるGHG排出量を車種別に把握することが必要である。

目的

 事業用火力発電比率の違いに応じた、電動車と内燃機関車の製造と走行に伴うGHG排出量を評価し、その結果から今後の課題を整理する。

主な成果

1. 前提条件

  • 本資料の評価に用いる分析モデルは産業連関モデルの枠組みに基づき、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の電動車3 車種と、内燃機関車の製造と走行に伴うGHG排出量を評価することができる。また、二廃棄に伴うGHG排出量は評価対象から除外している。
  • 事業用火力発電比率は、90%(火力高ケース)、45%(火力中ケース)、0%(火力低ケース)と設定した(表1-(a))。
  • 乗用車に関わる前提条件は、すべてのケースで共通して表1-(b)のように設定した。また、燃費と電費は、WLTC モードのようなカタログ値ではなく、実態に近い数値を想定した。

2. 乗用車一台当たりのGHG 排出量(生涯走行距離:10 万km)

  • 生涯走行距離を設定して、乗用車一台当たりの製造と走行に伴うGHG排出量を車種別に比較した。(図1)
  • 事業用火力発電比率が低下すると、車種によらず、製造に伴うGHG排出量が減少するが、充電需要に伴うGHG排出量が大きく減少することから、結果として、どのケースにおいても、GHG 排出量(合計)は、内燃機関車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の順に小さくなる。
  • 事業用火力発電比率が同じ場合、乗用車の電動化が進むほど、製造に伴うGHG排出量は多くなる。特に電気自動車においては、製造に伴うGHG 排出量の4 割強がリチウムイオン電池(二次電池)の製造に伴うものである。
  • 電気自動車の航続距離を伸ばすために、リチウムイオン電池の容量をさらに増加させた場合には、電気自動車の製造に伴うGHG排出量が増加して、環境面での優位性が低下する。本資料では一定の条件を基にGHG排出量を評価しているが、リチウムイオン電池の容量に限らず、その排出原単位、燃費、電費、生涯走行距離といった各種の前提条件の設定次第で、どの車種が環境面で優位になるかが変わり得る。電気自動車やリチウムイオン電池の生産規模が十分でないことから、GHG 排出量を比較する場合には前提条件を精査することが重要である。

3. 2030 年断面における乗用車のGHG 排出量(年間走行距離:0.8 万km)

  • 日本国内における乗用車の販売台数や保有台数と、年間走行距離を設定して、2030 年断面における乗用車の製造と走行に伴うGHG排出量を評価した。(表2、図2)
  • 乗用車の保有構成は徐々に変化することから、2030 年断面における電気自動車やプラグインハイブリッド車が保有台数に占める割合はどちらも4%弱と小さく、GHG 排出量(合計)に占める割合も僅かである。
  • 事業用火力発電比率の低下は、充電需要に伴うGHG排出量への減少よりも、乗用車の製造に伴うGHG排出量への減少に、より大きく寄与する。
  • 将来的に電気自動車が普及する場合には、電源構成次第では充電需要に伴うGHG排出量が変動するため、電気自動車の普及政策と合わせ、電力の低炭素化を進めていくことが必要である。

政策的含意

 本資料の前提条件では、電力の低炭素化が進むほど、電気自動車は環境面で優位になった。ただし、乗用車の保有構成は徐々に変化するため、電気自動車がその多くを占めるまでには相当な時間が必要になる。 また、電力の低炭素化は充電需要に伴うGHG排出量を減少させるのに加えて、車種によらず、乗用車の製造に伴うGHG排出量を減少させる効果もある。特に、日本国内ではリチウムイオン電池の生産能力も限られ、今後、自動車メーカーが生産拠点を検討する上で、電力由来のGHG排出量が少ないことが一つの検討材料になり得る。リチウムイオン電池を含め電動車製造の事業環境整備の一環として、電力の低炭素化を進めていくことも重要である。

報告書年度 Report's Fiscal Year
2021年度
発行年月 Issued Year / Month
2021年6月
報告者 Author
間瀬 貴之

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