
3月4日、ホワイトハウスに集合した大手テック企業7社(左表)の経営陣は、トランプ大統領が示した「料金支払者保護誓約」に応じることを表明した。本欄では、この誓約の持つ意味と、データセンター(DC)向け料金に関する米国の現状を概観する。
誓約は、DC向けの発電容量の建設や購入、DC用の送配電インフラ増強費用の全額負担、テイクオアペイ型の最低料金制を含む州規制当局や事業者とのDC向け料金の交渉、立地地域からの人材採用と育成、系統信頼度の向上への貢献という5つの施策の実施を、これら企業が約束するというものである(右図)。
大統領は、1月12日のSNSへの投稿や2月24日の一般教書演説の中で、大手テック企業は自らの電力需要を賄う義務があるとし、その実現に向けた交渉を行っている旨を明らかにしていた。近年の電気料金の上昇はDCの電力消費の拡大によるとの懸念の声が増加し、DC建設のモラトリアムを求める法案が複数の州議会に提出される状況の中、経済安全保障的にも意味を持つDCへの世間の評判を改善するとともに、11月の中間選挙に向けた支持率の向上を図ることが大統領には求められていた。
本誓約は自主的取組の表明に過ぎず、誓約に応じた企業をはじめ、政府や電気事業者を拘束するものではない。米国では小売分野は州の管轄であり、誓約も示すように、DC向けの料金は、事業者との交渉の上での個別の契約で結ばれる、あるいは共通のメニューとして州規制当局により定められることになる。連邦政府は、大規模負荷の送電線への接続との関係で、この点にも連邦の規制が及ぶと主張しているが、州側は強く反対している。
ただし、DCの早期運開により大きな利益を得ることができるテック企業は、既に様々な動きを見せている。マイクロソフトは、誓約の内容を先取りするような施策を1月13日に発表した。グーグルは、複数の事業者との間で自前での発電容量の調達や送配電インフラ増強費用の負担を含む個別の料金メニュー設定に合意した旨を明らかにしている。しかし、個別メニューでの契約は、公表された料金体型とは異なり、内容が外部に見えないとの批判もある。
誓約の文言自体にも不明瞭な点が多い。例えば、誓約時に調査中、建設中であったDCは「(既存のものではない)新規の発電容量」を確保する必要があるのか。「自分達は既に負担すべき送配電インフラ増強費用は負担している」と主張するテック企業も存在する中、全額を負担すべきとされる「送配電インフラ増強費用」とは何を指すのか。誓約とは無関係のその他の大規模負荷顧客の取扱いを含め、その具体化にはまだ多くの課題が存在する。テック企業にディーゼル発電機等の新規電源を自前で用意させることについては、NOxの発生等、環境面からの問題も指摘されている。
さらに、系統信頼度の向上や送配電インフラ増強抑制の観点から、系統運用者にDCの負荷抑制を指示する権限を付与すべきとの主張があり、関連する研究も複数発表されている。しかし、具体的な制度への落とし込みはほとんどなされていない。2025年に制定されたテキサス州のSB6でも、その対象や手法は限定されたものに留まっている。
日本でも、DCの電力消費拡大に対する懸念の声が起こりつつあり、国の審議会の場でも検討が進められている。ここに示した各種の課題や、小売自由化の制度の違いを踏まえつつも米国の議論を参照することは有益であるといえる。
電気新聞 2026年4月8日掲載