発電所におけるエラーマネジメントプロセスの体系化と継続的改善方策の構築



背景


 ヒューマンエラーに起因するトラブル(ヒューマンファクター事象)の再発防止・未然防止に事業所全体で体系的に取り組む,「エラーマネジメント」の考え方が提唱されている。これを効果的に実践するためには,現状を踏まえた基本方針を立案したうえで,Plan-Do-Check-Act (PDCA)を回しながら展開することが有効とされている。しかし,これまで「エラーマネジメント」について個別の施策注1)に関する基本的考え方や実施例は示されているものの,発電所においてエラーマネジメントを実施するためのPDCAプロセスを構築した例はほとんど示されていない。


目的


 発電所大でPDCAを回しながらヒューマンファクター事象防止に取り組むことが可能な「エラーマネジメントプロセス」を体系化するとともに,このプロセスの継続的改善方策を構築する。


主な成果


行動科学・社会科学の知見,および,発電所での適用を踏まえ,以下を提案した。
1. エラーマネジメントプロセスの体系化
 エラーマネジメントの機能を具体化するとともに,各種施策との関係を明らかにしたエラーマネジメントプロセス(図1)を構築し,各種施策の実施手順を開発した。
 – 機能1「ヒューマンエラー防止活動の体系化」:施策P,D
 – 機能2「事象情報に基づく問題点の特定・再発防止」:施策a1~a4
 – 機能3「未然防止に向けた良好事例・潜在的問題点の特定」:施策b1~b7
 – 機能4「問題点に基づくヒューマンエラー防止活動の重点化」:施策C,A1,A2
 上記プロセスの要となる施策である「【Check】a2)重要事象分析」に不可欠な「ヒューマンエラーの背後要因モデル」に基づいて,すべての施策を行うことで,施策間の円滑な連携が可能となり,実効性向上が図られる。

2. エラーマネジメントプロセスの継続的改善方策の構築
 発電所で取り組み中の施策の実態を,①充実度,②浸透・定着度,③アウトプット充実度,④プロセスの目的に対する有効性,の観点で評価しながら,上記プロセスを段階的に導入する,すなわち,表1に示すように機能2の「【Check】a2)重要事象分析」の実施,機能2の拡充,機能1および4の追加,機能3の追加を行う方策を構築した。これにより,発電所の取り組み実態に応じた上記プロセスの導入・展開,各種施策の継続的改善が可能となり,より一層,ヒューマンファクター事象の再発防止,未然防止が図られることが期待される。



*要となる施策

図1 発電所におけるエラーマネジメントプロセスの全体像

表1 エラーマネジメントプロセスの段階的展開フェーズと
発電所におけるエラーマネジメントに求められる機能・施策の対応関係



[関連報告書]