リスクアセスメント手法の整備と情報データベースシステムの開発



背景


 効率的,効果的に安全対策を実施するためには,作業に潜むリスクを把握しておくことが不可欠である。また,平成18年4月1日の労働安全衛生法の改正施行により,安全衛生管理者を選任する必要がある業種の事業所においては,リスクアセスメントを実施することが努力義務化され,リスクアセスメントの導入が喫緊の課題となっている。


目的


 電力施設の保守作業を主な対象に,リスクアセスメント手法を整備する。さらに,リスクアセスメントにより得られたリスク情報を日常の業務で活用するデータベースシステムを開発する。


主な成果


(1) リスクアセスメント手法の整備
 作業を漠然と念頭に置いてリスクを思い浮かべた場合,すぐに目につくリスクのみにとらわれてしまい,リスクをもれなく洗い出すことは難しいと思われる。そこで,作業を工程,手順と細かく分解し,ひとつひとつの手順ごとにリスクを評価することを,リスクアセスメント実施にあたっての第一の要件とした。
 また、過去に発生したトラブル,ヒヤリハットなどは,リスクに関わる貴重な情報として活用できる。トラブルを詳細に分析し、作業現場に潜在していたリスクを洗い出すと、熟練した作業者でも思いつかなかったようなリスクである場合が往々にしてある。そこで,リスクアセスメントに際して,過去のトラブルを活用できることを第二の要件とした。
 具体的なリスクアセスメントの手法は,作業手順ごとに作業頻度,危害発生の可能性,危害の影響をそれぞれ点数化し,それらを掛け合わせる掛け算法とした。

     リスクポイント=「作業頻度」×「危害発生の可能性」×「危害の影響」

なお,HFCの手法では,労働災害のみならず,設備災害,環境災害(事業所外への有害物質の放出など),業務災害(計画外の停電など)のリスクも評価できることが特徴となっている。

(2) データベースシステム(RAIDS)の開発
 作業を工程,手順と分解して,個々の手順ごとにリスクを評価すると,作業の規模にもよるが,1つの保守作業で200程度のリスク情報が得られる。これを日々の業務に活用するためのデータベースシステム(RAIDS:Risk Assessment Information Database System)を開発した(図1
 RAIDSを用いると,作業開始前のツールボックスミーティングなどで,当日の作業に潜むリスク要素を作業者に周知し,作業安全に資する帳票を出力することができる。(図2

[関連報告書]


電力中央研究所報告Y08018 「タスクベース・リスクアセスメント手法の整備」
電力中央研究所報告Y05002 「タスクベースのリスクアセスメント情報データベースシステムの開発」
電力中央研究所報告S03005 「リスクアセスメント情報活用システムの開発」




(図1)


(図2)