電力経済研究 No.70
2025年2月
スウェーデンの放射性廃棄物基金(KAF)のリスク管理と基金運用実態
Study on the Management of “Nuclear Waste Fund” for Decommissioning and Radioactive Waste Disposal of Nuclear Power Plants and the Risk Management of the Fund in Sweden
- 佐藤 佳邦
- 稲村 智昌
- キーワード:
- 廃止措置
- 放射性廃棄物処分
- 放射性廃棄物基金(KAF)
- スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)
要旨
スウェーデンの原子力発電所の廃止措置及び放射性廃棄物処分事業(バックエンド事業)のための資金管理の手法について、各種文献から以下を明らかにした。
1) バックエンド事業のための資金確保の責任は、発生者負担原則にもとづき、ライセンス保有者(=原子力事業者)が負っている。原子力事業者は、発電電力量に応じて、「放射性廃棄物基金(Kärnavfallsfonden:KAF)」へ資金を拠出する責任を負い、拠出金はKAFが管理する。また原子力事業者は、早期閉鎖などの予期せぬ事態に備えて、一定の保証金を事前に積むことも求められている。
2) 原子力事業者が拠出すべき金額と保証金の額は、政府が決定する。その算定のため、ライセンス保有者は、共同で保有する会社(SKB)に費用見積りを委任しており、3年ごとに、政府機関である国家債務局に提出している。国家債務局は、提出された費用見積りをレビューして、上記金額等を算定する。
3) 将来のインフレリスクなどに備えるため、KAFはライセンス保有者が払い込んだ資金を、積極的に運用している。具体的には、政府発行債券などの安定資産のほか、2018年からは、国内外の株式、企業が発行する社債、投資ファンドなどにも投資を行っている。
1. はじめに
スウェーデンは、1980年実施の国民投票により、一部の原子炉を当初の稼働期限よりもかなり早期に閉鎖することとなった。このため同国は、他の原子力利用国よりも早い時期から廃止措置に向き合ってきた。
スウェーデンでは日本と同様に、「廃止措置及び廃棄物処分事業」(以下、バックエンド事業)のための資金は、ライセンス保有者(=原子力事業者)が外部基金に拠出する仕組みとなっている。
他方で、スウェーデンの特徴として、政府が拠出金単価を決定し、また、上記外部基金を監督するなど、資金管理に対する国の強い関与が挙げられる。ライセンス保有者が外部基金に拠出すべき総額を決定する際に、費用見積りにおける将来の不確実性とは別に、不測の事態に備えた額をあらかじめ織り込んでいることも同国の特徴である。
このように、バックエンド事業の資金管理をめぐるスウェーデンの仕組みは、日本を含めた各国と比べても特徴的な側面がある。そこで、同国の制度やその背景、制度の運用実態を詳細に把握しておくことは、今後日本のバックエンド事業費用の算定や、資金管理における国の関与を検討するにあたって参考となる。
スウェーデンのバックエンド事業の資金管理をめぐっては、ライセンス保有者から独立した基金制度である、「放射性廃棄物基金1)(Kärnavfallsfonden: KAF)」の存在が知られている(交告, 2015:原環センター, 2024)。しかし、KAFがバックエンド事業の将来の不確実性にどのように対処しようとしているのか、また、どのように基金を運用しているのかに着目して詳しく論じた文献は見当たらない。
本稿の目的は、KAFについてさらに詳細に明らかにするとともに、スウェーデンのバックエンド事業のための資金管理における官民の役割分担の特徴を明らかにし、将来の不確実性に対してどのように対処しているかについて、KAFの運用実態等を中心に明らかにすることである。
本稿の構成は以下の通りである。まず第2章では、スウェーデンの原子力発電事業及び既設炉のバックエンド事業がどのような状況にあるのかについて述べる。次に第3章では、スウェーデンのバックエンド事業の実施責任及び費用負担責任について述べる。そして第4章は、スウェーデンのバックエンド事業の資金管理について、特に官民の役割分担や不確実性にどのように備えようとしているかに着目して、その特徴を明らかにする。最後に第5章では、本稿のまとめを述べる。
2. 原子力発電事業とバックエンド事業の概況
2.1. 原子力発電事業の概況
スウェーデンは第二次大戦後に、軍事用途を主目的として原子力の利用を検討した。しかし同国は、結果的には核兵器保有国とはならず、また、その民生利用に早くから取り組んだ結果として、1972年に軽水炉であるオスカーシャム(Oskarshamn)発電所の運転を開始した2)。
その後のスウェーデンの原子力政策は、紆余曲折を経ている。1980年に実施された国民投票では、当時計画中だった原子炉の建設は継続されたものの、2010年までに徐々に原子炉の廃止を進めるとの脱原子力の方針が採用された。しかし代替する電源の見通しが立たなかったことから、2010年に議会がこの方針を撤回する法改正を行い、脱原子力(原子力稼働停止)の時期が先送りされた。ところが2014年の政権交代を契機に、将来的に原子力発電を全廃し、再生可能エネルギーへの転換を進めるという方針が再び表明されていた3)。
しかし2022年10月に、同国の中道右派連立政権によりまたも政策が転換されたことから、2024年12月現在において、スウェーデンは原子力発電を積極的に推進している。具体的には、まず2023年11月に、同国議会は、発電電力量における再生可能エネルギー比率を将来的に100%とするとの従来の目標を変更し、2040年に脱炭素電源による発電比率を100%とするとの新たな目標を採択した4)。2023年に公表されたロードマップでは、2045年までに最大10基の原子力発電所を発電可能状態にするとの目標が示され、そのために、2035年までに少なくとも250万kW相当の原子力発電所新設が想定されている5)。同ロードマップでは、リスク分担モデル(Risk Sharing Model)を通じて、新設のための資金確保に関連する国の責任を明確化する必要があるとされている。
そして議会は2023年11月29日に、原子力発電所の新設を認めるとの政府提案を承認した。これとあわせて議会は同日、原子炉の新設を既存原子炉サイト内での建替えに限定していた1998年環境法典の規定を改正し、4つの既存サイト近傍での新たな場所への原子炉の新規建設を可能とした6)。この法改正により、理論的には、スウェーデン全土で10基以上の原子炉が同時に稼働可能となる。
また、2024年1月に、スウェーデンのエネルギー・産業大臣は、原子力発電所新設の推進を任務とする「国家原子力発電拡大コーディネーター」7)を新設し、これに原子力産業の経験者(Carl Berglöf氏)を任命した。同コーディネーターは、原子力発電拡大のための政府の単一の窓口となることが期待されているほか、原子力拡大に必要な施策の分析をとりまとめ、遅くとも2026年末までに公表することとなっている8)。
2024年8月には、先述したリスク分担モデルに関する調査報告書が公表され、立法案作成に向けたモデル案が示された。モデル案では、下記の項目の達成を目指している。
➢新設原子力発電所の投資コストと比較して低コストでの発電を行う
➢建設段階におけるコスト効率性について強いインセンティブを確保するとともに、運転段階における市場価格シグナルに対応するインセンティブを維持する
➢同定された市場の失敗に対処する支援策を設計する
➢民間事業者が新設原子力発電所に意欲的に投資ができるように、充分な期待利益を提供する
➢EUによる国家補助審査9)の基準をクリアする
以上はスウェーデンの原子力政策の変遷であるが、同国における原子力発電の占める位置付けはどうか。2010年代以降には、特に1970年代運転開始の原子炉の経済性が低下した10)ことから、それらの一部の閉鎖が決定されたものの、いまだスウェーデンでは発電電力量に占める原子力発電の割合が高くなっている。2024年10月現在、同国内で稼働している発電用原子炉は、フォルスマルク(Forsmark)発電所1号機から3号機(BWR)、オスカーシャム発電所3号機(BWR)、リングハルス(Ringhals)発電所3号機と4号機(PWR)の計6ユニットであり、設備容量合計は7.0GWである(表1)。発電電力量ベースでみると、原子力発電が占める割合は、2005年に45%、2010年に38%となったあと、2015年に34%、直近2023年に29%と徐々に低下してきているが、依然として水力発電と並ぶ同国の主要電源となっている11。
2.2. バックエンド事業の概況
2.2.1. 廃止措置の概況
スウェーデンにおいて廃止措置中の原子炉の状況をまとめたものを表2に示す。各種資料によると、2028年までに解体を完了したのち、解体廃棄物等の処分を経てサイト解放(=他の用途に当該サイトを利用可能な状態にすること)を目指すとの計画が立てられている。なお2024年12月現在において、スウェーデン国内でサイト解放にまで至った原子炉は存在していない。
廃止措置進捗状況の一例を示すと、オーゲスタ発電所では、ウェスティングハウス社が入札を経て廃炉事業(圧力容器と内部構造物の解体及び除去作業)を受注し、2020年に廃炉作業を開始した。2024年11月現在の進捗であるが、原子力事業者(Vattenfall)が2024年9月に地元住民に対して示した資料12)によると、小規模(出力1万kW)な炉ではあるものの、すでに原子炉圧力容器の解体が完了し、最終的な処分のために暫定的に保管されている段階である。その中で示された今後の工程表によれば、2025年中に作業を完了、2026年に原子力安全規制当局である放射線安全庁(Strålsäkerhetsmyndigheten:SSM)のレビューを受け、2027年前半には廃炉作業の完了が予定されている。他の発電所についても、2028年までに各原子炉の解体作業が進められていくことになっている。
2.2.2. 廃棄物処分事業の概況
スウェーデンは、2024年12月現在において、使用済燃料の最終処分場の立地点選定が完了している、世界でも数少ない国の1つである。
スウェーデン国内の原子力発電所で生じた使用済燃料は、下記SKBが1985年にオスカーシャムにおいて操業開始した使用済燃料中間貯蔵施設(Centralt Mellanlager för Använt Kärnbränsle:CLAB)に輸送されて、最終処分場が操業を開始するまで、中間貯蔵施設のプール内で貯蔵される(原環センター, 2024)。
最終処分場については、立地点候補であった二つの自治体(エストハンマル(Östhammar)とオスカーシャム)で実施された調査結果を踏まえて、廃棄物処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(Svensk Kärnbränslehantering AB:SKB)は、2009年6月に、エストハンマルのフォルスマルクを候補地として選定した。2011年3月に、SKBは、フォルスマルクにおける処分場立地・建設のライセンス申請を行い、2022年1月に、政府は同申請を承認してSKBにライセンスを与えた13)。そして2024年10月に、SKBは、フォルスマルクにおける処分場建設・運営について、国土環境裁判所(Mark- och miljödomstolar)から、環境ライセンスを認める判決を得た14)。同判決により、フォルスマルク処分場に関連するライセンス取得プロセスは完了し、SKBは建設作業を開始することが可能となった。
3. バックエンド事業の責任主体等
3.1. 廃止措置事業の責任主体
スウェーデンでは、原子力発電所の運転には、原子力事業法に基づくライセンス及び環境法典に基づくライセンスの両方を要する(OECD/NEA, 2008)。このうち原子力事業法は、ライセンス保有者が安全な廃止措置の責任を有すると定めている15)。具体的には、ライセンス保有者は、原子力発電所の建設に先立って、予備的廃止措置計画の作成が義務付けられ、さらに、発電所の運転中は廃止措置計画を適宜更新し、10年ごとにこれを先述の放射線安全庁(SSM)に提出しなければならない。
SSMは、放射性廃棄物管理や使用済燃料の処分場の問題などを監督する。具体的には、SSMは放射性廃棄物に適用される各種の技術基準に関する規定を発布するほか、放射性廃棄物管理を審査するとともに、廃棄物の管理・貯蔵・処分に関する規則が遵守されているかのチェックを行う16),17) 。
ライセンス保有者は、原子炉の運転停止から1年後に、詳細な廃止措置計画をSSMに提出しなければならない。またライセンス保有者は、実際の廃止措置作業の開始前に、新たな廃止措置計画とともに安全分析報告書をSSMに提出し、承認を受ける必要がある。運転停止から、最終廃止措置計画と廃止措置開始の申請までの期間はSSMの規則による定めはないが、ライセンス保有者は、廃止措置計画のスケジュールを作成し、説明する義務を負う(IAEA, 2012)。
先述の通り、安全な廃止措置の実施責任はライセンス保有者が負っているが、その実施にあたっては、自社実施の他、他ライセンス保有者と共同での実施、競争入札による外部事業者への委託、ライセンスの第三者への移転も許容されている(Rannemalm et al., 2016)。
原子力事業法上、廃止措置の実施にあたって別個のライセンスは要求されない。ただし、廃止措置事業は常に環境への重大な影響を及ぼすものとみなされているため、安全報告と放射線モニタリングプログラムについてそれぞれ事前承認をSSMから得る必要があるほか、環境法典18)に基づく特別のライセンス19)を取得する必要がある20),21) 。なお、環境法典の下で廃止措置に関するライセンス発行の可否を決定するのは、先述の国土環境裁判所である。
3.2. 廃棄物処分事業の責任主体
SKBの前身であるスウェーデン核燃料供給会社(Svensk Kärnbränsleförsörjning AB:SKBF)は、1972年に、核燃料サイクル事業の一部の共同実施による円滑化を主要な目的に、原子力事業者によって共同で設立された。SKBFの重要な役割は、使用済燃料と放射性廃棄物の管理であった。
設立当初のSKBFの主要な業務は、使用済燃料の再処理に向けられていた。その後、廃棄物管理事業の重要性が明らかになったことにより、特別のプロジェクト組織である核燃料安全プロジェクト(Kärnbränslesäkerhet:KBS)が設立された。KBSは、その後、略称はそのままで、SKBFの一部門である放射性廃棄物処理・処分部門(Avdelningen för Kärnkraftsavfallets Behandling och Slutförvaring)となった(Larsson et al., 1986)。
スウェーデンの原子力事業を規制する基本的な法律は、「原子力事業に関する1984年法律3号(原語:Lag (1984:3) om kärnteknisk verksamhet)」(以下、1984年原子力事業法という)である。同法の10条前段は、発生原因者に対して、安全確実な方法での放射性廃棄物の処分を義務付けている。そこでSKBFを改組する形で、廃棄物処分の実施主体としてSKBが設立された(石倉, 2001)。
SKBの法人形態は、その出資者である原子力事業者と同じ有限責任会社(Aktiebolag,略称AB)であり、これは日本の会社法制度の株式会社に相当する。つまりスウェーデンでは、規制面で政府の監督は受けるものの、放射性廃棄物の管理処分事業の実施主体はあくまでも民有・民営会社である。2024年12月現在のSKBの所有者と出資割合は、Vattenfall(36%)、Forsmarks(30%)、OKG(22%)、Sydkraft(12%)となっている(図1)。
3.3. バックエンド事業の費用負担
原子力発電所の廃止措置の作業は、 燃料搬出作業(defueling)、閉鎖作業(shutdown)、解体作業(dismantling)に分類できる。このうち燃料搬出作業とは、廃止措置期間のうち、核燃料が原子炉の中に残置されている時期を意味し、閉鎖作業とは、すべての核燃料が取り出されたあとのものを意味する。
廃止措置の責任は、「すべての設備の作業が完了し、すべての核物質及び放射性廃棄物が恒久的に封印された処分施設に据え置かれた時点」まで継続する(1984年原子力事業法10条前段3号)22)。ただし厳密には、放射線防護法(2018:396)第5.4章の規定により、他の用途にサイトが利用可能となって、究極的に完了する。2.2で述べたように、これまでにごく小規模のものを含めて7つの原子炉が停止し、そのうち1つは解体されたが23)、2024年12月現在において、廃止措置が完了したものはまだない24)。
先述の環境法典の下で要求されるライセンスは、「原子力発電所その他の原子炉が廃止措置されることとなる活動」に対して発布されるもので、その適用期間は、「原子炉が停止された時点から、原子炉が燃料搬出作業・閉鎖作業・解体作業を経て、あらゆる核燃料及びその他の放射性汚染物質が当該設備サイトから恒久的に除去されたときまで」(環境規制(2013:251)22章[原子炉の廃止措置]1条)とされている。
スウェーデンで上記の廃止措置費用及び放射性廃棄物処分費用の資金確保義務を負うのは、ライセンス保有者である25)。これは、いわゆる発生者負担原則に基づいている。
これら費用の支払いに必要な資金を確保するために、スウェーデンでは、放射性廃棄物基金(KAF)と呼ばれる、ライセンス保有者の外部に設立された基金制度が活用されている。1982年まで、廃止措置費用及び放射性廃棄物処分費用は、ライセンス保有者の内部資金で確保されていた。しかし1982年に、議会の決定により、スウェーデン中央銀行の国家債務局(Riksgälden)の口座に置かれた外部基金で資金を確保する方法に改められた。そしてその後1996年に、KAFが資産運用者として資金管理の責任を負う現在の制度が採用された26)。
ライセンス保有者はKAFに対して、設備の運転期間にわたって「放射性廃棄物処分料(nuclear waste fee)」という拠出金を払い込む。SKBの英文資料(例えばSKB(2019))では放射性廃棄物処分料と記述されているが、放射性廃棄物処分のみならず、原子力発電所の廃止措置をも含んだバックエンド事業の資金となることに留意が必要である。
ライセンス保有者がKAFに払い込んだ金額が、廃止措置・廃棄物処分に要する費用に対して不足する事態が生じた場合において、ライセンス保有者は依然として廃止措置費用に対する完全な責任、つまり不足額を負担する責任を負う。そこで、KAFに放射性廃棄物処分料(拠出金)を支払う義務のある当事者(=ライセンス保有者)は、「処分料で賄うことを想定していたが、不足が生じて賄うことができなくなった費用、その他予期せぬ事象に起因する付加的費用」のために、政府に対してあらかじめ保証金(guarantee)を提供しなければならない27)。
仮に廃止措置が完了するまで(そしてすべての放射性廃棄物が封印された処分場に配置されるまで)に、基金が廃止措置費用をカバーするに不十分であることが明らかになった場合は、運転期間が終了し、施設が廃止された後であっても、ライセンス保有者の保証金が費用を埋め合わせるために用いられる。反対に、個別のライセンス保有者に関連するすべての費用を支払っても基金に資産が残っているような場合には、基金の残余分が当該ライセンス保有者または支払者に対して払い戻される(Ministry of Environment, Sweden, 2014)。
4. バックエンド事業のための資金管理
4.1. 廃止措置事業の費用見積り
スウェーデンでは、原子力発電所の廃止措置や、使用済燃料及び原子力事業から生じるその他の放射性残留物の管理及び処分に要するあらゆる対策のための費用を見積もることは、ライセンス保有者の責任である。
この責任に基づき、ライセンス保有者は、原子炉ごとの詳細な廃止措置費用見積りを3年ごとに作成し、KAFの監督官庁である国家債務局28),29)に提出しなくてはならない30)。ライセンス保有者は、KAFに対して払い込むべき放射性廃棄物処分料の必要額に関する計算及び勧告の十分な基礎となるだけの廃止措置費用見積りを提出することを義務付けられている。
国家債務局は、ライセンス保有者が提出した費用見積りをレビューするとともに、各ライセンス保有者がKAFに支払うべき放射性廃棄物処分料と保証金の金額を計算する31)。放射性廃棄物処分料は、それぞれの原子炉が50年運転するという前提32),33)で計算される(SSM, 2020)。国家債務局の提案に基づいて、最終的には政府が、向こう3年間の放射性廃棄物処分料単価と保証金の額を定める。放射性廃棄物処分料の算定は、3年ごとに見直され、新たに計算された費用、発電電力量予測、不確実性の評価等を考慮した上で調整されることになる。
SSMは、ライセンス保有者の費用計算のためガイダンス(SSM, 2014)を作成し、公表している。費用計算(見積り)は、実施に向けた制度設計(system’s design)とスケジュール案のためのSKBの現時点でのプラン(これはリファレンス・シナリオと呼ばれる)に基づかなくてはならない(SKB, 2022)。
OECD/NEAのISDC34)(International Structure for Decommissioning Costing)の費用区分の中で、SKBの費用見積りに含まれているものを表3に示す。
廃止措置費用は、一つのサイトに複数の原子炉が所在する場合であっても、個々の原子炉ごとに計算される。しかしながら、複数の原子炉が所在するサイトには特定のユニットに帰属させることができないビルや施設(サービスビル、作業場、汚水処理プラント、アクセス道路など)が存在している。相互利用されるこれら構造物の廃止措置費用は、原子炉とは別個に見積もられる。サイトの所有者は、相互利用される構造物の廃止措置費用も負担する。
4.2. バックエンド事業の総費用見積りの現状
法的には費用見積りを作成する責任はライセンス保有者にあるが、実際には、ライセンス保有者はSKBに対して統合費用見積報告書(通称:プランレポート)を政府に提出するよう委任している35)。そしてSKBが各種のシナリオに基づいた将来費用の予測について、3年ごとにライセンス保有者とSKBが共同で報告書を提出している。この報告書には、公衆縦覧させるための一般公開版と、非公開版の2つがある。このうち非公開版には、当局がレビューのために要求している、4つのライセンス保有者の間の費用分配や放射性廃棄物処分料と保証金の計算に関する詳細情報が含まれている(SKB, 2022, p.5)。
SKBのプランレポートは、放射性廃棄物の管理・処分、原子炉の廃止措置、その他の細かな費用について、別個の見積りを含んでいる。それら費用の総額が、個社の放射性廃棄物処分料計算の基礎となる。廃止措置作業中に生じる廃棄物の管理に関する費用は、原子炉の廃止措置費用に含まれているが、解体廃棄物の輸送・処分に関する費用は含まれていない。このうち後者については、プランレポートにおいては別途計算され、掲載されている。プランレポートは、国家債務局によって精査される。
現時点(2024年11月)で入手可能な最新のプランレポートは、2022年10月公表のSKB(2022)である。原子力発電所の廃止措置の基本費用として将来の必要額を238億3,000万スウェーデンクローナ36)(SEK)と見積もっており、さらに全放射性廃棄物の管理・最終処分を含む事業全体の将来費用を総額1,241億SEK(およそ1兆6,700億円)と見積もっている37)。見積総額は、前回のプランレポート(SKB, 2019)における1,100億SEKから、およそ140億SEKほど増加している。その内訳であるが、廃止措置関連費用は233億4,000万SEKから238億3,000万SEKへと約5億SEKほどの増加にとどまっているのに対して、最終処分関連の各項目が軒並み増加している(表4)。参考までに、個別の発電所の廃止措置費用見積りの例としてリングハルス発電所の見積りをまとめたものを表5に示す。
国家債務局は、プランレポートを精査し、向こう3ヶ年度にライセンス保有者が支払うべき放射性廃棄物処分料について、政府に対して勧告をする。処分料の最終的な決定(validation)は、政府が行う。
4.3. バックエンド事業のための資金確保の枠組
放射性廃棄物処分料はkWh単位で算定され、ライセンス保有者は、各年の発電実績に応じて当該年度の1年分を、年度末に一括で支払う。仮にあるサイト内の原子炉が早期閉鎖などによりすべて停止されたとしても、ライセンス保有者は放射性廃棄物処分料を支払う義務があるため、その場合はkWhに応じた金額ではなく、年間一括で算定される。
2010年代になって、プランレポートにおける費用見積りが更新された結果、廃止措置(または放射性廃棄物管理・処分)の費用増加が見込まれたため、当局は、ライセンス保有者がKAFに支払う放射性廃棄物処分料を引き上げてきている。例えば、それまで各社平均0.01 SEK/kWhだった放射性廃棄物処分料単価が、2012年から2014年の期間に0.022 SEK/kWhへと引き上げられたが、その背景には、使用済燃料最終処分施設の費用が再精査された結果、費用が180億SEKほど増加したことがある。このとき、SSMは0.03 SEK/kWhへの引き上げを提案したが、政府はその引き上げ幅を抑えた(SNCNW, 2017)。
2015年から2017年の平均単価は0.04 SEK/kWhへと引き上げられたが、その背景として、従来の廃止措置・解体費用の過小見積りが明らかになったこと、短寿命放射性廃棄物の最終処分場の拡張が必要となったこと38)などが指摘されている。さらに、2018年から2020年の平均単価は0.05 SEK/kWhへと引き上げられたが、その背景には、一部の発電所が早期閉鎖を決定したことが挙げられる。2023年9月時点における放射性廃棄物処分料単価や保証金等を表6に示す。
ライセンス保有者は、表6に示した保証金総額を毎年支払うのではなく、処分料単価算定の対象年(表6では2022~2023年)において、それまで支払った保証金と合わせた総額が表6の数値になるように支払うことが求められる。
KAFの取り崩しと用途は、国家債務局、場合によっては政府によって決定される。ライセンス保有者は、廃止措置、放射性廃棄物・使用済燃料の管理と処分(これの事業に関する研究活動を含む)のためにすでに用いた出費については、継続的に取り崩しを受ける。KAFは、当初から決定され管理されている目的に対してのみ用いることができる。実際の支出は、国家債務局によるレビューの対象となる39)。
4.4. 不確実性にどのように備えているか:費用増加への対応
4.4.1. 費用増加への備えと資金不足の場合の考え方
スウェーデンでは、バックエンド事業の不確実性については、放射性廃棄物処分料及び保証金の算定の際に不確実性を考慮した分析が実施されており40)、処分料単価やリスクマージンに織り込まれている。これにより、費用増加を含めた予期せぬ事態への対応が一定程度なされていると評価できる。
しかし、それでも費用が見積りよりも増加して、KAFへ拠出された資金では不足する事態はあり得る。資金不足が生じる最も蓋然性が高いシナリオは、原子炉の早期閉鎖と考えられる。その場合、個々の原子力発電会社と放射性廃棄物処分料支払い義務を負うその他のライセンス保有者は、万が一KAFに積み立てられた金額が十分でない場合においても、すべての費用に対して完全な責任を負う。先述した通り、すべてのライセンス保有者は、実際の放射性廃棄物処分費用とKAFへの払い込み額の差額が発生したときに備えて、保証金を提供する義務がある。ライセンス保有者が放射性廃棄物処分料支払い義務を果たさず、KAFが不十分であるとされた場合には、当該保証金が払い出されることが予定されている。
なおKAFの特徴として、各ライセンス保有者が払い込んだ金額については、KAFの中でライセンス保有者ごとに明確に区分されていることを指摘できる。すなわち、あるライセンス保有者に関連する費用を賄うための資金が不足したからといって、他のライセンス保有者が払い込んだ資金をもってそれを補うといったことは、スウェーデンでは想定されていない41)。
上述のように費用を負担する義務を負うのは、あくまでもライセンス保有者である。したがって、費用が増加してKAFへの拠出金が不足した場合であっても、ライセンス保有者がメンバーとなっている企業グループの親会社は、原子力事業法または環境法典に基づくいかなる責任も、公式には負わないとされている(SNCNW, 2016)。このような制度が採用された背景は不明であるが、スウェーデンでは、図2に示すようにライセンス保有者が複数の会社によって複雑に共同所有されていることを指摘できる42)。もしも、資金的責任を負担する能力を有するライセンス保有者や責任当事者が最終的に存在しない場合には、廃止措置及び廃棄物処分の責任は、国家が負担することとなる(SNCNW, 2016)。
4.4.2. KAFに拠出された資金の運用
原子力のバックエンド事業は、数十年の長期にわたる事業である。そこで将来のインフレなどのリスクに備えるために、ライセンス保有者がKAFに拠出した資金は、そのまま塩漬けにするようなことはせず、積極的な運用がなされている。
KAFに払い込まれた資金の投資先は、「基本ポートフォリオ」と「長期ポートフォリオ」に区分されている。基本ポートフォリオは、主として政府発行債券や、資産的裏付けがあるいわゆる「カバードボンド」に投資を行っている。これに加えて2018年からは、長期ポートフォリオへの投資も開始された。長期ポートフォリオは、スウェーデン国内外の株式、企業が発行する社債、投資ファンドなどにも資金運用の対象を拡大しているほか、リスク回避のためにデリバティブ取引も活用している43)。
KAFによる資金の運用については、年次報告で詳細な報告が行われている(2024年12月現在で入手可能な最新の年次報告はKAF(2023))。
2019年から2023年までの、KAFの基本ポートフォリオと長期ポートフォリオの運用実績を、それぞれ表7と表8に示す。2022年の運用実績は、利益率が大きなマイナスとなった上に、インフレ率が他の年と比較しても相当高い値となったため、基本ポートフォリオと長期ポートフォリオの実質利益率はどちらも大きなマイナスを記録する結果となった。長期ポートフォリオの実質利益率は、他の年の運用実績が好調であったため、2019年から2023年の平均を取れば正値(4.75%)となった。一方で、基本ポートフォリオの実質利益率は、他の年においても2022年の大きな負値を補うほど好調な運用実績ではなかったため、2019年から2023年の平均を取ってもマイナス(−4.86%)となった。
2019年から2023年までの、KAF全体の運用実績を表9に示す。2022年を除けば、他の年の実質利益率はプラスであったものの、2022年に記録した大きなマイナス(−23.03%)の影響は補いきれず、2019年から2023年の平均はマイナス(−2.17%)となった。KAF(2023)では、2023年の運用実績には満足しているものの、2022年の例外的に低調だった運用実績の影響を回復するためにはしばらくかかるだろうという見通しが示されている。
5. おわりに
スウェーデンではバックエンド事業の資金確保のため、ライセンス保有者に対して、政府管理の基金(KAF)への発電電力量に応じた拠出を義務付けている。このKAFへの拠出制度の特徴は、原子炉の早期閉鎖等により想定していた運転期間が短縮してしまった場合や、予期せぬ事情が発生した場合に備えて、一定金額の「保証金」を事前に上乗せすることが求められている点にある。
バックエンド事業費用の見積りやKAFへの拠出はライセンス保有者の責任で行われるが、ライセンス保有者が提出した費用見積りのレビューや、各ライセンス保有者がKAFに払い込むべき放射性廃棄物処分料と保証金の金額を計算するのは、政府機関である国家債務局である。処分料等の最終的な決定は、国家債務局の勧告を用いて政府が行う。すなわち、スウェーデンでは、バックエンド事業のための資金を拠出する責任はライセンス保有者にあるものの、実際にどの程度の拠出額にするのか、拠出された資金をどの程度の目標をもって運用するのかについては、政府が強く関与している。そしてKAFは、ライセンス保有者の拠出金を塩漬けにするようなことはせず、将来の費用増加といったリスクに備えるため、積極的な運用(投資)を行っている。
スウェーデンは2022年に、世界に先駆けて使用済燃料の最終処分場の立地点選定が完了した。立地点選定が完了したことによって、立地点に関する不確実性は縮減し、バックエンド事業費用全体の不確実性も縮減するという見方もありうる。しかし、バックエンド事業の総費用見積り(SKBのプランレポート)を、2019年時点と2022年時点のもので比較すると、3年間で大幅に増加している。その背景には、全体的費用増加、なかでも使用済燃料の最終処分場に関する費用の大幅増加がある(Riksgälden, 2023)。今後、最終処分場の建設等の工程が進む中で、それまでの費用見積りと比較してどの程度の乖離が見られるのか、それに対して、KAFの運用実績や保証金の額は十分であるか等について、引き続きスウェーデンの動向に注目していく。
参考文献
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- 1)KAF自身のウェブサイトにおける英語訳は「Nuclear Waste Fund」であり、我が国ではこれに「原子力廃棄物基金」という訳語を当てている文献もある(例えば、原環センター(2024))が、「原子力廃棄物」という日本語は人口に膾炙しているとは言えないことから、本稿では「放射性廃棄物基金」という訳語を用いる。
- 2)スウェーデンは当初、濃縮を経ずに天然ウランをそのまま利用可能な重水炉の活用を目指し(スウェーデンラインと呼ばれる)、1954年にオーゲスタ(Ågesta)発電所を運転開始させるなどしたが、その後、技術的・経済的要因から軽水炉に転換した(中嶋, 2012)。
- 3)日本原子力産業協会ウェブサイト
(https://www.jaif.or.jp/news_db/data/2014/1009-03-06.html 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 4)IAEAウェブサイト
(https://cnpp.iaea.org/public/countries/SE/profile/preview 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 5)World Nuclear Newsウェブサイト
(https://www.world-nuclear-news.org/Articles/Roadmap-launched-for-expansion-of-nuclear-energy-i 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 6)なお当該新設を行うサイトについては、環境法典の規定に基づいて、自治体の同意を要する(Hofverberg, 2024)。
- 7)スウェーデン政府資料での英訳はNational Nuclear Power Coordinator(「国家原子力発電コーディネーター」の意味)となっているが、原語(En nationell samordnare för utbyggnad av kärnkraft)中のutbyggnadは「展開」「拡大」を意味する言葉であり、原語に忠実に翻訳すれば「国家原子力発電拡大コーディネーター」となる。文献によってはNew-build coordinator(「新設コーディネーター」の意味)としているものもある。
- 8)2024年6月に中間報告書が公表されている(National Nuclear Power Coordinator, 2024)。
- 9)欧州連合では、発電分野における支援策も含め、加盟国による特定の産業・事業者に対する支援(これを国家補助(state aid)と呼ぶ。)は、市場での公正な競争に適合するのかという観点から審査される。原子力分野におけるEUの国家補助審査については、丸山(2022)を参照。
- 10)経済性低下の主な要因は、電力市場価格の低下に加え、原子力発電税の負担が大きかったとされる
(World Nuclear Newsウェブサイト(https://www.world-nuclear-news.org/Articles/Sweden-abolishes-nuclear-tax 最終閲覧日:2024年12月18日)参照)。 - 11)IAEAウェブサイト
(https://cnpp.iaea.org/public/countries/SE/profile/highlights 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 12)Vattenfallウェブサイト
(https://karnkraft.vattenfall.se/siteassets/agesta/presentation-fran-informationsmote-2024.pdf 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 13)フォルスマルクの選定過程の詳細については、原環センター(2024)を参照。
- 14)SKBウェブサイト
(https://skb.com/nyhet/environmental-judgement-means-construction-can-start-on-skbs-spent-fuel-repository/ 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 15)このほか、原子力施設の廃止措置前及び廃止措置中の計画に関するSSMの規則(SSMFS 2008:19)は、ライセンス保有者が、施設の将来の廃止措置のための予備的な計画を確実に行わなければならないと規定している。これには技術的な計画に加えて、解体・撤去に関する会計処理の要件なども含まれている。
- 16)このように、廃止措置には原子力事業法の規制と環境法典の規制の双方がかかることになるが、廃止措置事業に関してこれらを監督するのはともにSSMであるため、コーディネーションの問題は生じないとされている(SNCNW, 2016)。
- 17)SSMは、このほかにも医療用放射線関連の規制など幅広く監督する。
- 18)スウェーデンの環境法典については、同国政府による英訳などを参照した。
- 19)これは、3.1冒頭記載の原子炉の運転に必要な環境法典によるライセンスとは別個のものである。なお、環境法典が要求するものを「許可(permit)」と呼ぶもの(例:Ministry of Environment, Sweden (2016))や、認証(authorisation)と呼ぶもの(例:SKBウェブサイト)があるが、多くの文献(例:IAEA(2012))、Amft et al. (2019)、SNCNW(2016)など)は「ライセンス」としているため、これに従った。
- 20) SSMの職員ら(Amft et al.(2019)によると、実際にはライセンス保有者は、まず、稼働停止後と現実の廃止措置開始までの環境影響をめぐるライセンスを取得したあと、現実の詳細な廃止措置作業計画が策定されたときにそれに基づくライセンスを再度取得している。
- 21)別途、廃止措置実施にあたり、環境影響評価を実施することも必要とされている(Ministry of Environment, Sweden, 2016)。
- 22)1984年原子力事業法10条前段「原子力事業のライセンスを保有する者は、以下の各号のための必要な措置を確実になすことの責任を負う;1. 運転の性質及びそれが実施される状況を考慮した上での安全の確保、2. 運転から生じた放射性廃棄物または運転から生じた放射性物質(再利用されるものを除く)の安全な管理及び処分、3. 運転が停止した施設におけるすべての作業が終了し、すべての核物質及び放射性廃棄物が恒久的に封印された処分場に据え置かれるまでの安全な廃止措置。」このうち、法律が用いた「恒久的封印」という言葉は、ライセンス保有者の責任が消滅する時点を定義するものである。したがって、最終処分場をめぐる問題は、ライセンス保有者の長期におよぶ責任に関する原子力事業法の規定と直接的に関連している。
- 23)先述のように廃止措置は、放射線防護法(2018: 396)上、サイトが他の用途に利用可能となって究極的に完了する。したがって、いわゆる厳密な「グリーンフィールド化」は求められておらず、他の発電所など工業用地に転用する場合には「ブラウンフィールド化」で足りるとされている。例えば、バーセベック(Barsebäck)原子力発電所の跡地は、ブラウンフィールドとして新たな発電所に転用予定である(Peachey, 2020: Bärenbold, 2023)。
- 24)残る6つの原子炉が2028年までの廃止措置を予定している。直近に停止された2つの原子炉(それぞれ2020年と2019年に停止したリングハルス1号機と2 号機)については、すでに燃料が搬出されて現在はオンサイトで貯蔵されており、長期廃棄物のための最終地層処分施設が建設・運開する(2045年前後)まで用いられる中間貯蔵施設(CLAB)に向けて、順次輸送される。
- 25)KAFウェブサイト
(http://www.karnavfallsfonden.se/informationinenglish.4.725330be11efa4b0a3f8000131.html 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 26)KAFウェブサイト
(https://www.karnavfallsfonden.se/informationinenglish/aboutthenuclearwastefund/history.4.697303b91648b46fd8d21bb.html 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 27)スウェーデンでは、商用原子力発電所の廃止措置はまだ初期段階にあるため、実際の廃止措置費用が想定から大幅に乖離したような事例は報告されていないようである。
- 28) 国家債務局は、中央銀行とは別に、国家の債務(国債)の管理などを行う機関である。なお同局のウェブサイトによる主要業務6項目の一つに、放射性廃棄物管理の資金確保が掲げられている
(https://www.riksgalden.se/fi/About-the-Debt-Office/our-mandate-and-work/ 最終閲覧日:2024年12月18日)。 - 29)従来、原子力発電所の廃止措置や廃棄物処分・管理の資金確保について監督する規制当局はSSMであったが、2018年に、国家債務局に移管された。
- 30)国家債務局が必要と認めた場合には、ライセンス保有者に対して、費用見積を3年よりも前に提出することを命じ、または追加的な費用見積を提出することを命じることができる。
- 31)詳細は、「2006年法律647号:原子力事業からの残留物質の管理のための資金的対策に関する法律(Lag (2006:647) om finansiering av kärntekniska restprodukter)」及び同施行令にあたる「命令2017年1179号:原子力発電の残留物質の資金確保に関する命令(Förordning (2017:1179) om finansiering av kärntekniska restprodukter)」に定められている。
- 32)2013年にSSMは、処分料の水準を維持可能となるよう、計算の前提となる原子炉運転期間を40年から50年へと変更することを決定した。なおスウェーデンの原子力発電所については、基本的な設計寿命は40年とされているものの、初回のライセンスについて特定の期間が設けられているわけではなく、10年ごとの安全審査で安全上の要件を満たす限り、運転期間に制限はない(稲村, 2021)。
- 33)支払期間の最後に支払い単価が高騰しないよう、常に最低6年間運転を継続するとの前提で計算される(SSM, 2020)。
- 34)OECD/NEAが示している、廃止措置費用を見積もるための国際的に共通のプラットフォームを指す。
- 35)筆者らが確認した限り、プランレポートは1984年から2008年までは毎年、作成・公開されていたが、2010年からは3年ごととなっている。この制度変更の背景については、今回の調査では明らかにすることはできなかった。
- 36)2024年12月18日現在において、1スウェーデンクローナ(SEK)は約14.01円である。
- 37)これらの費用の中には、中間貯蔵設備及び原子力発電所内の浅地中処分施設の費用(1.1億SEK)、及び、運転中廃棄物に関する短寿命中低レベル放射性廃棄物最終貯蔵施設(Slutförvaret för kortlivat radioaktivt avfall:SFR)の費用(11億SEK)は含まれていない。これらの費用は放射性廃棄物処分基金の制度とは別に、ライセンス保有者が直接負担するべきものとされている。ここでいう運転中廃棄物とは、短寿命の極低レベル廃棄物(密封されたか、コンクリートまたはスチールコンテナに封入された運転中廃棄物で、最終的には、浅地中処分かSFRで処分するもの)、及び、短寿命の低レベル・中レベル廃棄物(最終的にSFRで処分するもの)である。
- 38)World Nuclear Newsウェブサイト
(https://www.world-nuclear-news.org/Articles/Government-backs-Swedish-waste-fee-hike 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。 - 39)本文記載の用途などに関する規律は、廃止措置費用のための資金の払い出しに関するものであるが、同様の規律は、同じくKAFから支出される、(1)廃棄物品の安全な管理・処分の費用、(2)残余物の安全管理及び最終処分並びに施設の廃止措置に関する研究開発の費用、(3)基金資産の管理コスト、処分料・基金の払い出しに関する質問のレビューの費用にも適用される。また基金は、国に生じる各種の費用、例えば廃止措置の監査、基金資産の管理、処分料と基金からの払い出しに関連する質問のレビューなどの費用に対しても用いられる。
- 40)SKBが開発した確率論的計算モデルを用いて不確実性マークアップを経時的に配分する手法であるstretching法が用いられている(Riksgälden, 2023)。
- 41)この点については、KAFウェブサイトの以下の解説が参考になる。すなわち「たとえある原子炉所有者が払い込んだ処分料の総額・・・が当該払い込みを行なった者の費用をカバーするのに不十分であることが明らかになった場合であっても,他の原子炉所有者が払い込んだ処分料をその不足額を補うために用いることはできない」とされている
(http://www.karnavfallsfonden.se/informationinenglish/thefinancingsystem.4.697303b91648b46fd8d21cd.htm 最終閲覧日:2024年12月18日)。 - 42)ライセンス保有者の親会社のひとつであるバッテンフォール(Vattenfall)は、スウェーデン政府100%保有の企業である。
- 43)Riksgäldenウェブサイト
(https://www.riksgalden.se/en/our-operations/financing-of-nuclear-waste-management/how-is-nuclear-waste-management-to-be-financed/ 最終閲覧日:2024年12月18日)及びSKBウェブサイト(https://www.skb.com/about-skb/funding/ 最終閲覧日:2024年12月18日)参照。
佐藤 佳邦(Yoshikuni Sato)
山口大学 経済学部(2024年9月まで、電力中央研究所 社会経済研究所)
稲村 智昌(Tomoaki Inamura)
電力中央研究所 社会経済研究所