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講演会「低レベル放射線の影響を考える K. Becker教授を囲んで」開催

平成16年8月30日(月)大手町ビルにおいて、NPO法人放射線教育フォーラムとの共催で、標記講演会を開催しました。

Klaus Becker教授は、ドイツ・ユーリッヒ原子力研究所および米国・オークリッジ研究所において放射線計測の専門家として研究に従事され、ドイツにおける原子力および放射線防護基準に関するとりまとめをされています。また、ドイツ・スイス放射線防護学会の初代会長も勤められた実績があります。

今回、放射線教育フォーラム主催「第3回放射線教育に関する国際シンポジウム(平成16年8月22日〜26日、長崎)」の招待者として来日され、東京でも低線量放射線に関する講演をしていただく運びとなったものです。

講演会では、Becker教授は社会的にも経済的にもますます大きな負担を強いることになってきたLNT仮説からのパラダイムの変更に向けた特にヨーロッパにおける最近の動向について触れられました。また、原子力および放射線利用の将来にとってパブリックアクセプタンスは何よりも大切であること、さらにわずかな放射線量が許容されるかどうかという問題は、新しい科学的証拠、経済的・政治的利害、メディアの影響などが複雑に絡んでいることなどについても述べられました。


【講演趣旨】

演題「放射線恐怖症を克服する(Radiophobia: A Serious But Curable Mental Disorder)」

放射線恐怖症とは、自然の放射線レベル程度の弱い放射線に対して過剰な恐怖を抱くことであり、恐怖心をあおるメディアなどに原因がある。
パブリックアクセプタンスの欠如により生じた放射線恐怖症の結果として、ドイツでは高レベル放射性廃棄物貯蔵施設が政治的な理由のみによって凍結されたり、信頼性の高い原子力発電所が寿命を待たずに早々に廃止させられようとしている。
放射線恐怖症を克服するためには、まず、誤解の基ともなっているLNT仮説と集積線量の概念を規制から取り除き、線量限度を観察可能で有害な健康影響がある最低のレベルまで引き上げるべきである。また、メディア、政治家、教師、地域組織などに対する情報提供と教育の改善などのアプローチが有効である。


【総合討論におけるBecker教授のコメント】

放射線恐怖症をなくすためには、正しい知識を広めるための講演会を開催したりコメントを発表したりすることが大切であるが、なかなかメディアには取り上げてもらえない。時間とマンパワーが必要である。
放射線恐怖症は、最近始まったものではなく冷戦時代に互いに相手の兵器に対するネガティブキャンペーンを張ったことからも来ている。
ドイツ政府は脱原子力政策を掲げているが、放射線治療の一種であるラドン治療に対しては、伝統的療法であったということに加え、その効果が科学的に立証されているという理由により、政府が特に反対する動きはない。

Becker教授講演の様子

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