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内閣府 食品安全委員会「放射性物質の食品健康影響評価に関する審議結果(案)について」に対する当センターのコメント

【意見その1】

厚生労働大臣より、「食品中の放射性物質についての指標値を定めること」が依頼されているが(評価書案10 頁17-18 行目)、本評価書(案)は、食品中の放射性物質に関する指標値を定めておらず、依頼内容を満たす回答とはなっていない。

個人線量管理が不可能な公衆を生涯線量によって防護する考え方は、外部被ばくと内部被ばくの合計線量で指標を設定したとしても内部被ばくを特定できず実用できないばかりでなく、国際的な放射線防護の考え方とも整合しない。今後、飲食物に関する放射性物質についての指標値を定める場合は、国際的な放射線防護の考え方に基づいて、検討が行われるべきである。


(関連情報)

国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力事故後も平時も「年間線量」による公衆の防護を勧告しており、国際原子力機関(IAEA)は本年5 月、ICRP 勧告に準拠する形で、世界保健機構(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)と共同で一般安全指針GSG-2「Criteria for Use in Preparedness and Response for a Nuclear or Radiological Emergency」を発行し、原子力事故後に適用すべき指標値を具体的に推奨している。本評価書(案)においても一般安全指針GSG-2 を取り上げ、指標値検討の参考とするべきである。

【2011年8月25日提出 (財)電力中央研究所 放射線安全研究センター】


【意見その2】

評価の参考とする文献は、評価書案で示される評価基準である「研究デザインや対照集団の妥当性、統計学的有意さの有無、推定暴露量の適切性、交絡因子の影響、著者による不確実性の言及(評価書案220 頁)」を満たすものや最新の知見を反映したものを引用するべきである。具体的には以下の2 点が挙げられる。


1 点目:評価書案204 頁7-19 行目

小児白血病に関して、Busby 2009 を引いており、別添表(項目18)では信頼度B と高い評価を与えているが、当該論文は背景の異なる5 集団を横断的に比較する論文であるにも関わらず、その比較の妥当性の確認を行っていない。そもそも「方法」の記述がわずか5 行の論文であり、本評価所中で示した評価基準を満たしたものとは判断できず、「調査・研究手法が適切なもの」(評価書案219 頁)にも該当しない。このような不適切な文献を引用すべきではない。


2 点目:評価書案199 頁 28-39 行目

中国高自然放射線地域における染色体異常について、Wang et al. 1990 を引いて「安定及び不安定染色体の頻度が有意に高かった」としているが、これは古い論文であり、後の研究(Zhang et al. J. Radiat. Res. 45: 441-6, 2004)で、安定型染色体異常に関しては、高自然放射線に由来する線量とは比例しないことが、より高い信頼性をもって示されている。したがって、38-39 行目の「しかし、このような被ばくは染色体損傷を引き起こす可能性がある」という記述は削除すべきである。

【2011年8月25日提出 (財)電力中央研究所 放射線安全研究センター】

以上

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